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二十二、奇襲作戦

 俺の考えた筋書きはこうだ。


 義経たちをこの船に迎え入れ、亡命を手伝う振りをする。

 そして、隙を見て……討つ。


「ウチの(かしら)はこちらにも非があったと考えているようです。……なので、どうです? 一泊滞在していただいて、それでチャラにしませんか?」


 まず、ジャックに宿泊を促してもらい、どこかの機会で「亡命」の話を切り出す。

 そもそも客になってもらわなきゃ破綻する計画だが……そこは、ジャックの交渉術を信じるしかない。


「私は構わない」

「……確かに、宿は決まっていませんがねぇ……」


 仮面の騎士は凛と答えるが、クエルボと名乗った赤毛野郎は警戒しているらしく、探るような目付きで船の方を睨んでいる。


「安くしておきますよ! ウチなら甲板の上で食事も取れます! 今日はよく晴れているんで、絶景ですよ~」


 ジャックはどうにか興味を引こうと必死に「宿」を売り出す。


「ふむ……」


 クエルボはじろじろと船の奥の方にまで視線を投げる。

 ……まさか、殿下を探していやがるのか……?


「まぁ、我らが騎士は『構わない』とのことですし、僕もそれに従いましょうか。ペドロも構いませんね?」

「……クエルボ殿、今の私は『ペタロ』ですよ」

「どちらでもいいじゃないですか」


 何とか泊めさせることには成功し、ジャックが額の汗を拭ったのが見える。

 ……さて、大事なのはここからだ。気を引き締めねぇとな。




 ***




 他の客と同じように船室に案内し、食事の時間になれば呼ぶと伝える。

 その隙にカサンドラとロレンソを倉庫に呼び、今後について話した。ジャックに野暮用ができたため、アリーを殿下の傍に控えさせ、部屋に防御魔術をかけてもらっている。……もっとも、長時間発動させる魔術は消耗が激しいと聞く。話し合いは手短に終わらせたいところだ。


「しかし……そのような策、上手くいくのか?」


 カサンドラは訝しげにぼやく。

 無理に協力しろという気はなかったが、どうもカサンドラは殿下に絆されつつあるようで、ここまで特に文句を言うことなく説明を聞いていた。


「そうだな……あの『正義の道』を相手にするならば、正攻法では難しい。奇襲をかけるというのも理に(かな)っている、か……」


 ロレンソの方は、カサンドラの腕の中で難しい顔をしている。


「だが、向こうにもやましい考えがあるならば、こちらからの提案には警戒してこよう。……そこは、どう乗り切るつもりだ?」

「そこなんだが、ジャックがいい案を思いついたらしい」


 首を傾げるカサンドラに、瞬きをするロレンソ。

 倉庫の扉を開けると、ジャックが自分よりも頭一つは大きい鎧を引きずって現れる。


(すす)の手入れ完了……っと。燃えてなくて助かったぜ」


 顔を見合わせる二人を手招き、作戦を耳打ちする。


 義経たちにはひとまず、他の客と同じように過ごしてもらえりゃいい。……動くなら、明日だ。

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