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二十一、「義経一行」

 船の下、数名の男が俺達の前にいる。

 右手側には「正義の道」を名乗る騎士。左手側には図体のでかい神父服の男。中央には背の低い、それでいて頭が回りそうな男。

 他にも二人ほどが騎士に付き添っている。

 エセ神父以外は初めて見るが、おそらく、他の男たちもカミーノ・デ・ラ・フスティシアの仲間だろう。


「先程は血の香りと殺気につられ、非礼を働いた」

「……つまり、ハナから襲うつもりはなかったと?」


 俺の言葉に、中央の男が大きく頷いた。


「その通り。この騎士は元はと言うと、貴方の殺気に当てられたのです」

「く、クエルボ殿、何もそのような言い方はありますまい」

「おや、事実でしょう?」


 神父が(たしな)めるのも聞かず、クエルボと呼ばれた男は平然と語る。

 短く切り揃えた赤髪、鋭く切れ長な瞳。……なんと言うのか、ずる賢そうな男だ。

 ……と、今度は当の騎士が口を開いた。


「どのような事情があったにせよ、先に剣を抜いたのは私。非礼を詫びるのは当然のこと」


「正義の道」は毅然と語る。……転生しているとはいえ中身は義経だ。油断はできない。

 奴は奇襲を得意とする。しかも、向こうも殿下と同じくスペインから追われていると来た。殿下を差し出すことで立場を安定させる……なんて、こっちと似たようなことを考えた可能性は十分にある。


「……我らは訳ありの身。大した詫びはできませんが、かの騎士は妙に律儀者(りちぎもの)でして……顔を見せねば気が済まない、と」


 赤髪の男は眉をひそめつつ語る。顔を見せねば……つっても、仮面で顔は見えちゃいないがな。

 ……さて、こちらはどう出るか。


「しばしお待ちを」


 とりあえずそう言っておいて船の中に引っ込み、ジャックとアリーを呼び付けた。


「どう思う?」

「うーん……怪しいですねぇ……何か裏がありそうです」


 俺の問いにアリーは難しい顔をしつつ、ジャックも首を(ひね)って考え込んでいる。


「……ともかく、向こうの流れに乗せられちゃまずいんじゃねぇの?」

「ああ。……と、なるとだ。こちらからある程度先手を打った方がいい」


 ……と、相談が長引いている間に、しびれを切らしたような声が背後から飛んでくる。


「あのー? もうよろしいですか?」


 クエルボとかいう野郎の声だ。


「ど、どうされますか?」

「お前に任せるぜ、ズィルバー!」


 アリーとジャックの視線を感じる。どうしたもんか……。

 ……いや、だが……上手くいけば絶好の機会でもある、か。


「……考えがある」


 事が上手く運ぶかどうかは分からない。

 ほとんど、博打に近い部分もある。


「耳を貸せ」


 ここが、正念場(しょうねんば)だ。

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