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―09― ***遠くの親戚より――
近くにある骸だけが、ツラマルの心の拠り所だった。また闇が訪れようとしている。日の落ちぬ山は、想像以上に暗い。ツラマルの目の闇は、夜の山が溶け込んだものなのかもしれない。剥き出した頭蓋骨をペロリと舐める。
そうしてまた、ツラマルは山のもたらす暗黒の一夜を乗り越える力を得る。
ツラマルが飼い犬だった頃は、闇の恐ろしさを知らなかった。檻には入れられていたが、煌々とした光が闇夜を突き破っていた。もう戻れない、人の開拓した文明世界。人工で、それは偽物かもしれないが、生き物としての喜びがツラマルは嫌いではなかった。
体を丁寧に折り曲げて、ツラマルは顔を伏せた。こうしていれば、いつかは闇夜は終わりを告げ、また日が世界を包むことを知っている。明日はあるのだ。死が明日を別つまで。




