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―08― ***目は口ほどに――
死を語る、目の存在感。三白眼が脳裏から離れない。きょろりともしなかった。目があった。確実に。生きていてくれたのなら、声があったはずなのに。あのトランクで空転していたのは、凛だけだった。
動転しつつも頭のどこかは冷静で、車に鍵をかけるのは怠らなかった。
コップに溢れるほど注いだ水道水を飲み干す。加速する心臓の動きはいっこうに落ち着かない。友也が車に乗るなと言った理由はアレなのか。若い女性の死体。
まさか、友也が……殺したのか……。
凛は頭を振った。友也に限ってそれはないと信じている。……しかし。
現にそこに死体はあるのだ。どうしよう。ついに凛はその場に崩れた。
絶対に手放さないと決めた幸せが、メキメキと音を立てて崩れていく気がした。
わたしは幸せになれないのか。そこまで幸せというのは遠いのか。
日が陰るまで、そして日とともに陰行く凛は、いつまでもそこから動けずにいた。
取り込まれなかった洗濯物がはためいている。




