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―21― ***壁に耳あり――
ベランダに絵美はいた。潤がぐっすり眠るこの時間にしか、喫煙できない。潤は煙草が嫌いだった。特に煙草を吸う女が嫌いらしい。
だから仕方なく、こんな明け方にわざわざ起き出してベランダで煙草を吸う。面倒臭いとは思いつつも、煙草を吸うのをやめることもできないでいた。
プランターの陰に隠した灰皿の代用品の小箱に吸い殻を入れ、いそいそと屋内に戻ろうとした時、一台の車が走ってくるのに気づいた。
「……凛のとこの車?」
凛の車がこんな明け方に戻ってくることはこれまでなかった。何となく見続けてしまう。
車は凛の家に駐車され、中から凛が出てきた。凛はどこか慌ただしく見え、そして後部座席から何か取り出した。ここからの距離では、後部座席から取り出された何やら長いものが何かを特定できなかった。
秋口の寒気に体が震えてきたので、絵美は家の中に戻った。




