第1章
嗚呼、こいつのせいだ
「おはようございます!エミリさん
今日も元気ですね!」
嗚呼、やかましいやかましいやかましい
「エミリさん?元気なのぉ?おーい」
黙れ黙れ黙れ!私に話しかけるな…!
「えーみりさーーん?エミリさんっ
今日もとっても可愛いエミリさん」
どうしてこうなったんだっけ、私が悪いんだっけ
あああの時気まぐれな行動なんて起こさなきゃよかったんだ
もしかしたら友達になれるかもなんて私が浅はかだったんだ
「エミリさんの友だちなら私がいるじゃないの!」
「ああもううるさいっ!!」
突然シーンとなりやむ部屋
やっと反応してくれたんですね、と興奮したように喜ぶコイツ
「…墨付さん…先生の授業…う、うるさいと思うなら帰ってもいいのよ?」
オマケに半泣きになりそうになりながら私に遠まわしに帰れと言っている先生。
周りの墨付さん。また独り言ー?という声
「いえ…大丈夫です…」
「エミリさんってば見えてるのに反応しないだなんて
やーねぇ!私が何度も何度も読んでも反応しないし
でも心のなかでは私を認識しているからね!
やめてよぉ…エミリさんが見えなくなったら
私本当に消えちゃうのよ?」
ぷくっと頬を膨らませても全く可愛くないし
正直コイツは男だ。しかもオネェ
そして、なぜ私が独り言扱いされているかと言うと
コイツの声はほかの人には聞こえない。
下級幽霊…と言うと怒るのだが
本人曰く 精霊「エレリルクトーン」
その事について今は語るべき事でもないが
霊力は弱く私の様な「クライア」-異能力持ち-
私はその中のゴースティア「霊能力者」である
高等ゴースティアは使い魔などを操れるらしいが
私はゴースティアになりたくてなった訳でもない。
選ばれただなんて聞こえは言いものの
勝手に人生にインプットされてきたのだ
幼い頃はそのせいで悩まされ
未だに友達だっていない日々
花の高校生活ってこんな物だっただろうか。
今だって、コイツ
自称エレリルクトーンのマドンナ(男)
シレンスに邪魔をされている。
シレンスと私の出会いは数日前に遡る
出会った時は大層な美少女だと思った。しかも人間の
川の中、岩の下で怯えたようにたたずまいしている
彼女はきっとなんらかの理由がありそこから退けなくなってしまったのであろう。
ここで問題。なぜ私は幽霊だと気付けなかったのか
高級の幽霊は確かに一般の人間の目に触れられるほど霊力は高い。しかし力が強すぎるあまり私達
ゴースティアには明らかに-幽霊-と分かってしまうのだ
明らかに霊力もなくハッキリとみえるその少女を
私はいとも簡単に人間だと信じ
助けるために少女に声をかけ手を伸ばした
しかし。とある男の子の一言で私はこいつが幽霊だと気づいた
「お母さん。なんであのお姉さん
1人で岩の方へ手を伸ばしてるの?」
5歳かそこらの男の子から見れば柵もないただの岩を登るだけなのに声を上げて大股をあけるお姉さんがいたら大層滑稽だろう
しかし男の子の母親から見れば私は明らかなる頭がおかしい変質者だ。母親は子供を私からひっぺがすように公園から出ていった
あんまり過ぎる
しかも、声をかけられた少女は嬉しそうに手を繋ぎ
「エレリルクトーンが見えるのですかッ!」
勘弁して欲しい。祖父に払ってもらうか
いやでも異霊は祖父の専門外だし
この世界に入りたくない私にはもっと祓う事なんて出来ない。
しかも今気づいてしまったがコイツ男…オカマだ。
最悪だ。さいあくだ。サイアクだ
へたに首を突っ込むとバチが当たるだなんて親の言葉は
本当に間違いがないと思った