かぶってみた
やあ、みなさん初めまして。俺はヒロというものだ。
現在夏というイカれた地球現象に対抗すべく設立された長期避難期間にあるのだが、俺にはそんなことをしている暇はない。
さらにイカれた言語の通用しない宇宙からの侵略者からこの青い地球を守らねばあ、
「雑魚の攻撃一発で死ぬってばっかだろおおおおおおおおおおおおおおオオオオオ!?」
マジでおかしい、ちょっとこれゲームバランスおかしくないですか? なんですか、え? 難易度ノーマルでやれってか! それこそバカだから!! そんなヌルゲーやるくらいならコンビニの不良に喧嘩売ってきてやんよほらかかってこいや!!
「あ、やっべ自爆した。クッソ! てか自分が蒸発する弾を持って空を飛び回るってこいつらそんなに自爆したいの? あ、なにこの角度ちょっとエロい」
そうか、そうなのか。俺が男だからいけないのか。
俺の意思を引き継ぐこの空飛ぶねーちゃんは意思を送るのが男だから、だから力を出し切れないのか。
「すまないヒロミ、俺は女にはなれないんだ。せめて……せめて何かでき、る? 男の意思を送るのが原因であれば、意思を生成する脳を女にすれば……女のパンツを被ればいいんだな!」
そう、俺には二つ下の妹がいる。兄妹の仲は悪くもなく良くもなく、お互い無関心といった良くある関係だ。
今、真面目な妹はきっと中学にでも行って真面目にテニスをしているんだろう。だんだん女らしくなっている妹のことだ。もし、パンツを盗んだことがバレたら俺の顔は社会的サーブで社会のゴミ箱にでもぶちこまれるだろう。
「素早い決断と、行動が必要だ」
そう呟いた2分後、俺は洗濯カゴにあった妹のパンツを左手に持ち、右手にコントローラーを握りしめていた。
「世界を守るためだ!!」
一切の躊躇なく、開かれた窓と扇風機で緩和されていない夏の蒸し暑さのせいだろうか? 俺は妹のパンツをかぶっていた。脱ぎたてほやほやだ。
そこで俺の意識は途絶えた。
ふむ、寝落ちとは俺もまだまだだな。時計を確認するに12時、あと1時間もすれば妹が帰ってくる時間だ。早くパンツを戻して地球を守ろう。
そう、夏は暑い。立ち上がった俺の視界の下部分にいつもは見えない衣服がチラッと見えたり、ちょっと立ち上がるために入れた力がいつも以上に弱々しかったのは、きっと暑さのせいだ。
予定通り、自室を出て下の階に降り、洗面所の洗濯カゴに妹のパンツを戻した。ついでにパンツ触ったんだし手を洗おうとした。その時だ、
「鏡の中に、妹と目元が似ていて他にもどこか面影を感じるが、ハツラツとした明るさではなく少し憂いのある大人しい感じの、なんというか俺が女だったらこんな感じになるかもしれないって俺の声可愛くねえか? 気のせい、じゃ……え?」
俺の動きとシンクロする鏡の中のお姉さんは俺だった。
1話完結、のつもりでしたが疲れたので終了です。
元気が出れば続きが出ます。
書き始めてなんかこのパンツかぶるのって見たことあるな、と思ったら昨日買った漫画がまんまそれでした。でもぶっちゃけいくら可愛くても被るのは……無理じゃないですかね?