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異界人。(仮題名)  作者: ミッチー
第1章
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第3話 お父さんは珍しいドラゴン

「父さん! 猪と鳥が狩れたよ!」


俺はそう言って、父さんの目の前に自分で狩った猪と鳥を置いた。


「良くやったぞ! ソラ! それでこそ我の子だ!」


「へへ」


時は流れ、俺はいつの間にか7歳になっていた。


ドラゴンの暮らしにはもう慣れ、自分で狩りも出来るようになった。


前世じゃ考えられないよな。

7歳で狩りって……


この森の地形も大体理解した。

多分、迷う事はないと思う。


「ソラももう7歳か……」


自分でもびっくりだよ……この世界に来てもう7年も経ってるなんて。

精神的には、前世も合わせて32歳。

いつのまにか俺も魔法使いだよ。


しかも三十代の7歳って……

どこの死神少年探偵?


死神少年探偵? 魔法使い?

意味がわからない人はwebで検索!


「よし! ソラ! 今日はもう引き上げるぞ!」


俺は空を見上げた。


「え? でもまだ暗くないよ?」


空はまだ青く澄み渡っている。

普段ならまだ狩りをしている時間だ。


「うむ。明日は少し特別な事をするからな。身体を休めるためにも今日は帰るぞ!」


特別な事?


「……わかった!」


気になったけど、聞かないようにしておこう。

そっちの方が、ワクワクするし。


「よし! じゃあ帰るぞ!」


父さんは翼を二、三回羽ばたかせて方向を変えた。


翼……か……


「……どうした?」


羽ばたかせたその翼を見ていると、父さんが気にかけてきた。


「う、ううん! なんでもない!」


「……安心しろ。ソラ。いつか必ず、お前にも翼は生えて来る」


「……うん」


「そしたら、共に空を飛ぼう! 空は気持ち良いぞ! ガハハハ!」


「……うん!」


転生して7年。

まだ、本当の事は言えてない。


早く言わなきゃ、もっと言いにくくなるのはわかってるけど、それでもやっぱり言えなかった。


言ったら、この生活が崩れてしまいそうで怖かった。




縄張りに帰ると、父さんはすぐにどこかに出かけてしまった。


「父さん、どこいっちゃったの?」


「さぁ。今日は、ソラの為にご馳走を取るって、張り切ってたから少し遠くかも知れないわね」


「今日! ご馳走なの!?」


「フフ、お父さん次第ね」


「やったぁー!!」


そんな話を母さんと交わしながら、俺は自分の拾ったお気に入りの木の枝を石で磨いていく。


これは狩りに使う道具。


木の枝を石で削ったりして、尖らせて槍のようにする。

木だからって、舐めてはいけない。

ちょうど良いところに入れば、心臓を一突き出来る。


大抵はこれを使って狩りをする。


でも、あと一つ。

俺にはお気に入りの武器がある。


それは、木刀。


これを作るのはかなり時間がかかった。


でも正直、実用性には欠ける。

けどカッコ良い。

だからいっつも腰巻に挟んで持ち歩いてる。


子供のうちしか出来ないしね。

こう言うの。


俺は、木刀をブンブン振ってその場でカッコつけてみる。


やっぱ良いよね。木刀。


……俺、精神年齢三十代なんだよな。


そんな馬鹿な事をしながら、約30分位がたっただろうか。



暇だ……

いつもより早く帰ってきたのは良いけど、こうまで暇だと、逆に何かしたくなる。


少し、出かけてみようかな。


俺は、右の腰に木刀を挟み、左の腰に木の槍をいくつか挟んだ。


これがいつも出かける時の格好。

はたから見たら、秘密基地に向かうわんぱく坊主だな。これ。


「ソラ? どうしたの?」


その様子を見て、母さんが話しかけてきた。


「ちょっと暇だから出かけようと……」


「……ッ! 駄目よ!」


「え?」


「あ…………ううん。それならお母さんとお話ししましょう? ね?」


「……うん。……わかった」


なんだ……今の異常な反応……

母さんがあんなに焦りを見せるなんて……

初めてかもしれない。


一人で出かけようとしたのがいけなかったのか?

確かに、出かける時はいつも父さんと一緒だけど……にしても今の反応は……


俺は左の腰につけている木の槍だけを外し、母さんの元に向かった。


「ソラ。今日は、ちょっと特別な昔話をしてあげる」


「特別な昔話?」


「そう。お母さんとお父さんの出会いの話」


おお!

これは正直気になる!


あのウブな父さんが、どうやって母さんと知り合ったのか!


「どう? 聞きたくなった?」


「うん! 聞きたい!」


「じゃあ、話してあげる」


母さんは、その場で一度立ってからこちらに向き直り、伏せた。


「昔ね。まだお母さんとお父さんが出会ってない頃、お母さんは少し荒れてたの」


「……今でもたまに荒れてるけど……」


「何か言った?」


「な、なんでもないです!」


かなり小さな声で言ったつもりだったんだけど……

流石ドラゴン……


ここに転生してきた時からだけど、母さんは父さんが馬鹿な事を言ったり、やったりすると、少し乱暴になる。


いや、少しじゃないか……


普通に笑顔で、怖い事言う時あるし……

普段は優しいんだけどね。


「昔は良く縄張り争いをしてたわ……もちろん、今はしてないけどね」


「わかってるよ」


「フフ、良かった。でね、出会ったのはその縄張り争いがきっかけなの」


「え!? 父さんと戦ったの!?」


「もちろん。縄張り争いだもの」


今じゃ全く想像つかない……


「ど、どっちが勝ったの?」


「……勝ったって言って良いのかわからないけど、お母さんが勝った。でもね、お父さんその時手を出してこなかったの」


「え、なんで?」


「か弱い女との縄張り争いなど興味がないって言ってた。お母さん、それを聞いて怒れちゃってね。プライドを……誇りを汚されたような気がして」


「ああ……父さんなら言いそうだね。で、どうしたの?」


「ボコボコにしちゃった」


「えッ!?」


「フフ。でもお父さんね、それでも手を出してこなかったの。それにさらに怒れちゃって、怒鳴りながら聞いたの。そしたら、こう言い返してきた」


「……」


「誇りやプライドを守るために、力を使うつもりはない。

本当に守りたいものにだけ、我は力を使う。

こんな縄張りなどくれてやる。

我には、この縄張りも、他の土地も同じに見えるがな……って……」


それを聞いて、カメとウサギの真剣勝負の話を思い出した。


誇り……プライド……


「お母さん、その言葉聞いて惚れちゃってね」


「父さん、その誇りやプライドって言うのに妙に敏感だよね。どうしてなの?」


「父さんの父さんがそう言う考えを持ってたからかなって言ってた。

……お母さん達見てるとあんまりわかんないかもしれないけどね、ドラゴンって元々凄くプライドや誇りを大事にしてるものなの」


「え? そうなの?」


「うん。少しでも縄張りに入り込めば喧嘩が起こるぐらいにね。だから、お父さんは少し珍しいドラゴンなの」


そうだったんだ……


「自分よりも、他を大切にする心をもつドラゴン。それは優しくてとても強い心だけど、とても折れやすい……」


優しくて、強いけど……折れやすい……


「だから、お母さんが支えてあげなくちゃね!」


強いけど、折れやすい……


矛盾してると思ってしばらく考え続けたけど、結局最後は、そう言うものなんだなって、自分の中で自己完結させた。


いや、正直なところ、わからなかった。


なんで、その心が折れやすいのか。


全くわからなかった。

ご閲覧ありがとうございました!


あとがきは特に書く事はないのでこれで終わり!

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