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クズはクズ箱の中でもクズでした  作者: モモノ猫
1章 自覚なき者
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7話 クズは恩を仇で返す 中

 どれだけ歩いたのだろうか。

 足が酷く痛む。何処かを痛めたかもしれない。

 ダメージを受ければ死ぬはずの俺は、まだ死んでいない。


 ああ、分かっている。

 『即死完全耐性』俺が気づかず手に入れていた特性だ。

 この特性が関係しているのは明らかだった。


 特性としては即死に対する物の様だが、俺はHP1である。

 だからどのようなダメージを受けても即死として判定されている様だ。

 これって不死身じゃねーのか?いや、そう決めるのは早計だな。

 何か抜け道があるかもしれない。

 とりあえず死に難い身体を得たと言う事で納得する事にした。


 道なりに進み草原から森へ入る。そして森からまた草原へと出た。

 道中で野党や魔獣に会う事はなかった。

 残念な事に即死耐性の効果を確認する機会は訪れなかった。

 草原の向こうを見渡す。とそこには民家があった。

 辺りは薄暗くなっており、今日はあそこに泊めて貰う事にした。



 ――― ドン!ドン!


「助けてくれ!

 頼む、助けてくれ」


 ドン!ドン!扉をたたき必死の声を装う。


「野党に襲われた。頼む。入れてくれ」


 ガサガサ… キィ~ 

 民家の中から人が顔をのぞかせる。


「どうしたんだお前さん

 その格好は、素っ裸じゃないか!!

 おいジーニ、何か着るもんを持ってこい。

 お前さん、早く入んな」


 中にいたのは爺さんと婆さんだ。

 裸の俺に驚いてはいたものの事情を察し快く迎え入れてくれた。

 中に入ると暖炉の前に案内される。


「そこの椅子に腰かけて暖を取るといい」


 言われた通り、椅子に腰を掛ける。

 爺さんが俺の足にそっとシーツをかけてくれた。

 体がほんのり温まり、心が和らいでいく。

 ちょうどその時、婆さんが服を持って現れた。


「あんた、これはどうだい?」


「ああ、それにしておけ、他のはサイズが合わんだろ?

 それからジーニ。こちらはえーと」


「ナナシです。

 助けてくださり、本当にありがとうございます」


 丁寧な受け答えをして、頭を下げた。

 横柄な態度で何か勘繰られても困るのだ。

 不審者として扱われないよう細心の注意をする。


「いやいや、困ったときはお互い様だ。そうだろ?ナナシ君。

 あれはジーニ、気は強いが良い女房さ。そして私は、アニだ」


 差しさわりのない会話を終えて俺は思う。

 ぎこちない態度ではあるが人柄のよさそうな老夫婦である。

 こちらの世界にも良い人と呼ばれる者がいるみたいだった。

 少し気が抜けていく。


 パァン!

 婆さんに肩をたたかれていた。


「風邪をひくよ、早くこれを着な」


 服がシーツの上に置かれ、膝の上に重さが加わる。

 背に腹は代えられないか… 俺は渋々服を着る事にした。


「あんたそんな細っこい体して、ちゃんと食べているのかい?

 そうだ、テーブルの上のパンを食いな」


 テーブルには、いかにも硬そうなパンが置かれていた。

 手を伸ばし、一口口に含んだ。


 ――― ブワッ。

 涙が出ていた。

 普段ウソ泣きで慣れている俺が、今泣いている自分に動揺を隠せない。

 泣きながら口を動かす。硬い。噛み切るために口をモゴモゴさせる。

 噛む砕いたパンの味は、涙とどこか懐かしい守られていると実感できる優しさの味がした。


 俺の心も相当弱っているな。姫様、洗浄が終わるかもしれませんよ。

 誰も居なくなった頭に向けて報告をする。しかし、返事はなかった。



「アオォ――――――――ン!!」


 突然、遠くの方から遠吠え聞こえた。

 アニとジーニが急に怯え始める。

 ガクガクと震え、頭を抱え込んでしまった。

 俺は涙を拭い、事情を聞く事にした。





 今俺がいるのはテリオと言う小さな村だ。

 ここは北と東側を大きな森林が囲み、

 森林を北に越えた所に霊峰ガルガットがそびえ立つ。

 そしてそこには神獣と呼ばれる化け物がいると言うのだ。


 神獣クフェルメキア。

 ガルガットに移り住んできた魔獣であり、

 前神獣を食い殺した経緯からガルガットの近隣住民からは酷く恐れられている。

 

 ここ最近、クフェルメキアがガルガットを降り、

 テリオ近辺に出没すると言うのだ。原因は今だ解明されておらず。

 解決の手段も無い。ただ、通りすぎるのを待っているそうだ。



 ――― おい、それっておかしくないか?

 そんな、化け物がいるなら野党なんている訳がない。

 騙したのがばれている?

 考えるのをやめ、アニとジーニの方を見る。


 ドカッ!!

 頭に痛烈な一撃を食らった。

 普通ならリスポンコースだ。

 そのまま崩れ落ち、床に倒れこむ。

 俺は薄れゆく意識の中、あの二人を見る。


 

「本当に、良い時に来てくれた。

 感謝するよナナシ君。困ったときはお互い様だ」



 今の俺は本当にどうかしている。

 本調子でない事を悔みながら

 俺の意識は途切れた。

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