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クズはクズ箱の中でもクズでした  作者: モモノ猫
2章 恬淡な友
35/45

33話 現状把握と腕試し

 ミュースから少し離れた山岳地帯。

 俺はクフェとミウを連れて狩りに出かけていた。

 武闘祭までの日が僅かで、その前に自分の力を試したかった為である。


 クフェが言うには筋力400はレベル70辺りで到達する数値で、

 勿論個人差はあるが、魔法を使わない前衛として認めて貰える最低条件には到達しているとの事。

 色々と言い回しを考えてくれているのだろうが、要するに微妙と言いたい様だった。


 武闘祭出場者の平均レベルは60と言われている。

 それ以上の者は国に囲われている事が多く、

 守秘義務により都市主催程度の武闘祭に出る事はない。

 つまり、レベル70程度の実力者である俺にもチャンスはあるのだ。

 筋力以外は闇の羽衣でカバーする。いける。

 こうやって、俺のやる気はクフェにより仕立てあげられた。

 後に約二名の例外居る事に気付くまでは。

 クフェとミウ。レベル122と141。

 はい、100を超えている。

 更にクフェには奥の手があるとか…


 レベル100越え。

 世界でも一つの目安にされる事柄で、

 それに到達している存在はその国に数名居るか居ないかのレベルである。

 また、国とっての切り札であり、その存在を隠蔽されている事が多いそうだ。

 そして、それらが暴れれば都市一つ位簡単に壊滅させる事が出来るらしい。


 物騒すぎる…

 個人が持つべき力じゃない…

 ふと、ある言葉を思い出す。

 『力があれば奪う側に回れる、そういった世界だ』姫様が言っていた事だ。

 この世界は、どうやらとんでもない格差社会だった。


 いやまて、俺の居た世界と変わらないじゃないか。

 金と強さ。その違いだけだ。

 さして変わらん。結局、持つ側に回れるかと言う事。

 そして俺は2つ持ってる。

 クフェとミウ。レベル100越え。

 俺の切り札。

 これなら奪う側でやっていけそうだ。

 俺の楽しい未来に光が差していた。



 今いる山岳地帯には小型の地龍がいるらしい。

 岩影に穴を掘り、そこを根城にしているそれは、

 警戒心が強く近づく者に堅い外殻を武器にした体当たりを仕掛けてくる。

 動きが素早くそして武器を通さない外殻。

 レベルの低い冒険者では歯が立たない相手だった。

 討伐推奨レベルは35。

 この数値は小国が抱える兵の平均的なレベルなのだとか。

 要するに今の俺なら楽勝。のはず。

 正直、舐めていた。


 自分のレベルを言ってみろ! 

 はい、レベル1ですとも…


 初戦は突然だった。

 気付くとそれは懐まで肉薄しており、回避などできなかった。

 吹き飛ばされると思った瞬間。

 地龍はクフェの右一閃により、消し飛んでいた。


「お兄ちゃん! 大丈夫?」


 心配そうに見詰めるクフェ。

 正直な話、大丈夫なわけない。

 何だあの速さ…

 気付く事すらできなかった。

 これが推奨レベル35?ふざけてるのか!

 100の間違いでしょ!!!


 俺とクフェの周りを先ほど潰した個体の仲間が取り囲んでいる。

 クフェの眼光がそれらに向く。


「うせろ」


 低い声だった。少女に似つかわしくない声。

 それを聞いた地龍は一目散に逃げだした。

 その声音にはミウも動揺していた程だった。


「続けますか?」


「…」


 クフェの質問に即答できなかった。

 俺は弱い。改めて知る現実。

 そこに最初の威勢存在していなかった。


「考え方を変えて下さい。

 お兄ちゃんは弱い。なら弱いなりの戦い方が有ります。

 卑怯だろうと最後に立っていれば勝ちです。

 戦闘中、常に闇化すればいい。反撃の機会はいずれ訪れます」


 その言草は、偉そうにミウに言って聞かせた言葉に似ていた。

 ざまーない。その通りだ。正々堂々やる必要などない。

 そもそも俺の流儀じゃない。

 今の俺なら、この世界に来た当時の俺でも勝てる。

 そう断言できる。

 俺は何処で変わってしまったのか…

 心当たりならあった。でも、今は置いておく。


 即座に闇化する。

 その姿にミウが驚くが今はどうでも良い。

 俺は雪辱を晴らすべく、地龍の後を追った。


 その後の事は語っても仕方ない。

 何故なら、そこにあったのは戦闘ではなく虐殺。

 戦闘中常に闇であり続け、隙を見て闇を解き、

 力に任せた全力の一撃。そしてまた闇に。

 その繰り返し。

 俺の力で地龍はあっけなく潰れた。

 事が済んだ時、そこには血の水溜りが出来ていた。


 それから暫く山に籠る。

 武闘祭まで鍛え上げる為だ。

 俺のレベルは上がらない、でも精神なら叩き直せる。

 俺は今の俺が許せなかった。

 何故ここまで弱くなってしまったのか…


 俺は前方を見据える。

 そこには俺の居た世界には存在しない大きさの熊がいた。

 討伐推奨レベル65タイラントベア。

 暴君の名に相応しいサイズの熊。

 俺は躊躇う事無く近づく。

 ここ数日で俺の闇化の速度はこれまでに無いほどの最適化を遂げていた。

 タイラントベアの振るう腕が見えなくとも、

 肌が危険を察知すると自然に闇になっていた。

 危険を回避すると自然に闇は解け攻撃を開始する。

 一方的な攻撃。

 そこに俺の初めてのスキルが発現していた。


 『陽炎稲妻水の月かげろういなずまみずのつき


 タイラントベアは遂に俺を捕らえる事無く絶命した。

 そして、俺の心には確かな手応えが芽生えている。

 武闘祭の前日。

 俺は確実な手段(力)を得たのだった。

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