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クズはクズ箱の中でもクズでした  作者: モモノ猫
2章 恬淡な友
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29話 ナナシさん最強化計画

 私のナナシさん。

 今のままでも素敵なナナシさん。

 そこに強さが加われば最強に見えませんか?


 実際、ナナシさんは強い… はず。

 姫様の御前ですら正気を保ち、平然としておられる御姿。

 母様を相手に戦い抜いた、その胆力。

 最高です!

 なのに何故レベル1… 有り得ない…

 このままでは、私のナナシさんが道端のゴミに殺される可能性すら考慮しなくてはいけない…

 ナナシさんがゴミにまみれるなど… あってはいけない。

 ゴミを片づけるのは私の仕事。

 私は綺麗好きです。

 ナナシさんの足元に塵一つ残しません。


 なのに… なんだあいつらは…

 姫様の御願いを聞いて見逃した塵が…

 ゴミ箱に戻って、私とナナシさんを観ていた、、だと?

 アリア帝国。あのゴミ箱風情が…

 ナナシさんの街に足を踏み入れる??

 既に数匹のゴミを掃除している。

 焼却されるまでゴミ箱に引き籠って居ればいいものを。

 私に母様程の力があれば、存在の痕跡すら残さず消して遣るのに。


 私は理解している。

 アリア帝国との全面戦争になれば、私が不利であると言う事を。

 一国を相手取ると言う事は、他国の介入を想定しなければならない。

 私はまだ、全世界を相手取れるほど強くはないのだ。

 忌々しい。自身の非力が、、、

 ここまで力を渇望したのは生まれて初めての事だった。

 戦力の強化が必要だ。


 初めは、金銭の調達。

 ナナシさんにも相談した事ですが、

 街の冒険者ギルドに登録して、仕事を貰うのが一番早いと思います。

 危険は伴いますが、私がいればナナシさんを守れる。

 それに、一緒の仕事がしたかったのです。

 でも、その願いは「契約社員とかマジ勘弁」

 との謎の言葉により一蹴されてしまいました…

 いいんです。ナナシさんにも都合と言うものがあります。

 私は判っています。きっとナナシさんには私に推し量れないお考えが有るのです。


 一人でギルド登録に行った日。

 ギルドはゴミで溢れていました。

 こんな場所に、ナナシさんを誘った私が許せません。

 周囲からは無遠慮に好奇の目が私に向けられています。

 登録を願い出ると、受付が失笑しました。

 私の我慢は限界でした。

 この場にもしナナシさんがいたらと思うと…

 私は受付のカウンターを押し潰していました。

 すると、ゴミの眼の色が変わります。

 それは怒りではなく畏怖でした。

 周りのゴミも総じて同じ。

 私への好奇の目は消えていました。

 受付がガクガクと震える中、私はギルドを後にしました。


 後日、メルファンと言うギルド長が私を勧誘に来ました。

 断ろうと考えていましたが、ナナシさんの散財した件もあり、

 私達にはお金が必要でした。

 それに、媚び諂うメルファンの姿は、見苦しくはありましたが、

 私達に向ける姿勢としては及第点です。

 私はメルファンの申し出を受ける事にしました。


 仕事は簡単でした。

 大体が魔獣の討伐依頼。

 行って、殺して、報告して、金を受け取る。

 このローテーション。実につまらないものでした。

 中には竜に破壊された渓谷の橋を架けなおすと言う仕事がありました。

 竜の脅威に警戒しつつ、橋を架ける作業は危険度最大級なのだとか、

 私は近くの岩盤を踏み砕き、それを橋として渓谷に架けました。

 ちょうどその時、空から飛来した蜥蜴がいました。

 私は息を吸い込むとそれに向かって叫びました。

 「うせろ!!!!!!!!!!!!!!!」

 今思えば少しばかり力が入っていたと思います。

 蜥蜴は空で弾け飛んでいました。

 後は岩盤を手で装飾し、渓谷の橋造りは完了しました。


 仕事の報告を行うと、メルファンが感涙していました。

 聞けば、蜥蜴は橋を破壊し近隣を荒らし周っていた竜だったとの事。

 竜の討伐。さらにはその素材。そして竜の胃からは大量の財宝。

 メルファンはホクホク顔でした。

 私の報酬もすごい額です。これで、暫くは何とかなりそうです。


 報酬の話が終わると

 メルファンが腕輪を私に差し出します。

 これは私が依頼していた物。

 待ちに待ったナナシさん強化アイテム。

 まだその一つ目ですが、これだけでもナナシさんは強くなれます。

 メルファンに向き直り、お礼の一言。


「メルファンさん、ありがとう」

 

 自然と笑顔が溢れます。

 それ観たメルファンは、顔を赤く何かモジモジし始めました。

 

「クフェ殿… もし良ければ儂の養子に…

 ヌフフ、クフェ殿が儂の娘に、

 いや、孫になって下されば何不住なく暮らせますぞ、、ヌフッフ」


 ゴミの呟きに私は耳を貸しません。


「メルファンさん、気持ち悪いです」


 メルファンさんがショックを受けた顔を浮かべた後、

 何か満更でもない表情をします。本当に気持ちが悪い。

 ですが、これはここ最近ギルドで報告をする際のテンプレートな流れです。

 慣れてはきましたが、少しうんざりします。


 メルファンはギルド長を務めるだけあって有能です。

 頼んだ物をしっかり探してくれますし、

 この国の王が士官の誘いを出した際も、メルファンさんが庇ってくれました。

 はい、この男は使えます。

 この手合いは利害が一致してる間に使い潰すのがベストです。

 私とナナシさんの為にしっかりと働いて貰います。



 ナナシさん最強化計画。

 私が随時進行している計画です。

 私はナナシさんと共に世界を手に入れます。

 その為の計画。その為の手段。


 資金はそれなり。

 尽きれば、また集めればいい。


 兵力は一人追加。ミウさん新しい仲間。

 彼女は使えます。彼女には私を強化する為の相手をしてもらいたい。

 彼女は気付いてない様ですが… 彼女は私よりレベルが上。

 ドーピングをしなければ勝てません。

 いずれにしろ良い拾い物でした。

 今は少数精鋭。いずれ大軍勢に育て上げます。


 そして、ナナシさん自身の強化。

 レベルが上がらない?

 ならばレベル1のまま強くすればいいだけの事。

 メルファンに探させた腕輪。

 禍々しい波動が放たれるそれは、何か怨念めいた力が渦巻いていた。

 そんな誰もつけたがらないであろう一品。

 クフェはこれがナナシの強化に繋がると確信している。

 物は試しだ。メルファンにお願いして、ナナシさん試合を組んでもらおう。

 タイミング良く、武闘祭が開かれるのだから。


 クフェルメリウスは楽しそうに笑う。

 ナナシとの楽しい未来を思い浮かべながら。

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