2話 プロローグ2 クズ、オリエンテーションに参加する
「理解したか? 」
冷めた声が、俺をたたく。
ここは地獄、俺は美しい獄卒にベットの上で今後についてのレクチャーを受けていた。
「それってどうなの…」
「どうなの とは? 」
「セルフ地獄ってなんだよ? 」
「だから、勝手に魂の洗浄を終えて、勝手に次の輪廻の流れに乗れ。
魂の洗浄には大抵苦痛がともなう、それを罰とする。
おめでとう、貴様は心の強さで我々に認められた。苦痛に耐え見事に魂の洗浄を終える事だろう」
やる気のないお褒めのお言葉とともに、大雑把なこれからが告げられた。
獄卒ちゃんの素っ気ない態度は、俺への不当な暴力の後も続いている。
もともと荒っぽい口調のようだが、現状俺には脈が無いらしかった。
「ちなみに、心の強さが認められなかったら、どうなるんだ? 」
「こちらの方で強制的な洗浄を行う、貴様がそれを望むなら、私はそれを歓迎しよう」
「結構です」
先ほど鉄格子を吹き飛ばした彼女の剛腕を忘れた訳ではない。俺は長い者には巻かれるタイプだ。
本能が俺に即答を選ばせていた。ちなみに俺の吹き飛ばされた腕はいつの間にか元通りだった。
獄卒ちゃん曰く、魂が生前の形記憶しているのだそうだ。その為、腕が無くなっても生えてくるらしい。
「そうか、残念だ。詳しい話は別の者がオリエンテーションを開く事になっている。勿論、参加するな? 」
「参加しない選択があるのか? 」
「自由参加だからな、参加の意思を聞く決まりになっている。
参加しないのであれば、ただちに刑を執行する 」
「参加するよ、情報は大切だ」
俺の返事が終わると、世界が崩壊した。
白い世界が一瞬で黒い世界に塗り替わる。ベットに座っていた俺はいつの間にか黒い世界に1人でポツンと立っていた。
◇
―――!?
周りから人の気配がした、それもかなり多い。
真っ暗で何も見えないが、周りから会話が聞こえ始める。
俺もそれに参加しようとした時だった
「静粛に!! 」
辺りが静まり返る。声量は小さいが深く重い頭に響いてくる声だった。
俺も同じだが、この中に反抗心の有る者はいないようだ。
ライトがともると、光が一人の男をうつしだした。
そこには偉そうな服を着た男が立っていた。
恰幅よく顔がでかい、口の周りを覆う黒いひげが印象的だった。
「それでは、オリエンテーションを開始する。
これより質問は認めん。オリエンテーション後各自担当に行え。
各担当者から聞いていると思うが、お前たちの最終目的は魂の洗浄だ。
方法は問わないが、大まかな指針は示すつもりだ。
具体的には、これよりお前達にはとある世界で好きに生き、好きに死んでもらう」
「「!?」」
辺りから困惑に満ちたどよめきが起こる。
「静粛に!!
勿論、ただ生きてもらうだけではないのだがな。ペナルティを受けてもらう。
ペナルティがどの様なものかは各自で確認しろ。
各自、目を閉じて自分の体調を思い浮かべろ」
言われたとおりに行う。
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??? 21歳 男 人間
レベル:1
HP :1/1
MP :0
筋力 :1
体力 :1
敏捷 :1
魔力 :0
耐久 :1
耐性 :1
next :?
経験値:0
スキル:なし
技 :なし
魔法 :なし
称号 :罪人
特性 :地獄の囚人 獄卒の不興 罪の代償
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なんですのん…これ…
それはガキの時にやったRPGゲームのステータス画面だった。
「「!?」」
また、辺りから困惑に満ちたどよめきがうまれる。
「静粛に!!
それがお前たちのペナルティだ。
これからお前達は弱者をロールプレイする事になる。
その為に、自分を把握するステイタス画面は必要だろ?
悲観することはない。
弱者としての人生を謳歌する事はゆるされている。
できるなら、ペナルティをはねのけても構わない。
好きに生きて好きに死ね。
ただし、魂の洗浄を忘れるな。
忘れても構わんが、それはお前たちにとって不都合な事になるやもしれんぞ。
後は各担当に任せる。以上だ」
オリエンテーションが終わった瞬間、辺りがまた暗くなった。
もう一度ステイタスを確認する……なんでこんなに弱いんだ?
理由は簡単だった。
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:特性:
地獄の囚人 「全てのステイタスを低下する。低下値は罪の重さに比例する」
獄卒の不興 「罪の重さが大幅に増加する。増加値は獄卒の怒りに比例する」
罪の代償 「罪の重さに比例した経験を得るまで、経験値を取得出来ない」
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獄卒ちゃん怒ってんのかな…