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クズはクズ箱の中でもクズでした  作者: モモノ猫
1章 自覚なき者
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14話 野盗、子連れの闇による被害報告

 その日、アリア帝国首都エクステンに軍部お偉方が集まっていた。


 アリア帝国は大陸中央に位置する軍事国家であり、

 1000年帝国とも呼ばれ、皇帝を首魁に軍部が脇を堅め栄えた国だ。

 鉱物資源や土地の豊かさもあり最盛期の版図は大陸の三分の二まであったとされる。

 しかし、周辺国家の台頭や内部紛争などで独立を許し今の国力に低下した。


 そして、アリア帝国領北部にある広大な地域ガッハーク。

 軍事拠点であるディメール要塞を主軸に北側からの進攻をくい止める重要地域だ。

 とは言っても現在帝国北部には大きな敵対勢力が無い。

 では何故重要なのかと言うと霊峰ガルガットの神獣対策である。

 かの神獣の癇癪により、ガッハークの一部が砂漠と化していた。

 手が付けられないのである。

 帝国は神獣を災害と認定し隠蔽する事で対面を保っていた。

 霊峰の周りには森林が広がり。周辺に村が幾つかあるが、そこまで手は回らないのが現実だった。


 そこに一報がもたらされたのである。


 帝国における軍部の最高司令官メルマン総督が困惑した表情をする。


「其れは真か?

 神獣クフェルメキアが討伐されたと?」


 冗談の様な内容である。

 長年の心労であった神獣が討伐されたというのだ。

 真偽確認の上で嘘であれば情報提供者は打ち首である。


「ええ、詳細についてはまだ確認中ですが、

 神獣が姿を消したのは事実です」


 補佐官マクウェルは答える。

 室内には各軍団を有する将達が列席していたが、皆一応に驚愕していた。


「神獣の生死は確認できずか…

 不確定要素を残し北部を手薄にする訳にはいかん。

 朗報ではあるが、帝には報告できんな」


 メルマンの落胆にマクウェルが続ける。


「ガルガット周辺の村人からこのような報告があります。

 神獣の遠吠えが聞こえなくなったと。

 また、報告は定かではありませんが他の魔獣が出没するとの事。

 これが事実なのであれば、少なくとも神獣の活動が停止したと思われます」


 メルマンが目を剥く。

 それが真実であれば。北部の空いた戦力を他に当てる事が出来る。

 それは新たな戦火の火種に他ならなかった。

 メルマンは動揺を抑え沙汰を下す。


「これより調査団を編成し、ガルガット周辺の探索を行え」


 しかしこれにはマクウェルが渋い顔をした。


「どうした、マクウェル?気分が優れない様だが」


 マクウェルが意を決し口を開く。


「先に私兵の者を向かわせました。

 しかし帰ってきた者がこう言うのです。子連れの闇にやられたと。

 周辺の村への聞き込みは実施できたのですが、

 帰りに身ぐるみを剥がされました」


 列席していた将が口を挟む。


「貴様。帝国の栄光に泥を塗ったと?」


「よい、マクウェルの私兵だ。

 それに退けるのならともかく、身ぐるみを剥ぐなど…

 普通の野盗にできるのか?」


 メルマンが将を窘め、野盗に対しての警鐘を鳴らす。

 マクウェルが告げる。


「周辺の村への聴取の際の話ですが、村が盗難の被害にあったそうです。

 そこでは全ての民家が被害にあい財産を持っていかれたとの事ですが、

 報告によると貨幣を一部返却したとの事。

 そして、クロム紙幣は被害を免れたそうです」


 一同に動揺が走る。

 クロム紙幣は近年、帝国で発行された通貨であり他国にあまり流通していない物だ。

 他国の人間から見れば貨幣に比べるとクロム紙幣は紙に等しい。

 そして、村を潰さぬよう儲けの一部を帰す手口は野盗と言うよりは、

 国の運営に係る者の匂いがした。


「それは、他国の者が我が国の国土を荒らしていると言う事か?」


「可能性があります。そして私兵の女性隊員が捕虜となりました」


「決まりだな」


 メルマンが重たい表情をする。戦争がはじまるか…

 ようやく、神獣の脅威が去ったやもしれぬのに…


「野盗討伐を命ずる。誰か手を」


 誰もが固唾を呑む。戦争の原因となる事を恐れるためだ。

 アリア帝国の衰退は軍部の士気にも影響を与えていたのだった。

 しかし、その中に手が上がる。


「ほう、君が行くかマーサ」


 マーサ・バルバレン。第三軍将の娘で本日は代理できていた。

 

「は!わが国土の荒らすばかりか、女性を捕虜とする卑劣さ、

 その命を持って償わせます」


「頼んむぞ」


「は!」


 これより、アリア帝国がナナシの敵に回る事になるのだが、

 彼はまだそれを知らないのだった。

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