11話 終・クズは恩を仇で返す
なんですのン… アレ…
ちょっと話が違うくないか???
どうやったらあれからクフェが生まれてくるんだよ。
それは存在しているだけで木々をなぎ倒し、
地面を陥没させる俺の想像とは別の生き物だった。
今まで何処にいたんだよあのデカ物?
這いよる闇。闇の集合体を核に持つそれは確かに、
クフェの力の一端を使っている様に思える。
たしか、アオ――ンって吠えてたよね?犬じゃないのかよ…
共有スキル『闇の羽衣』。強力な擬態能力を持つだったか?
何にでも成れるのかも知れないな…化け物め。
俺は意を決し、前に進み出た。
「アンタの娘を攫った。ナナシだ。
アンタが神獣クフェルメキアか」
俺とクフェを見て神獣は唸りだす。
「小僧… 唯ではおかんぞ!!」
言うより早く神獣は前足?で俺を叩きつぶした。
俺は全身に一瞬の破裂感を味わいながらも、
なお無傷で神獣の前足に押さえ付けられていた。
「何だ貴様は?何故潰れん」
「はあ、いてぇー。
娘を帰しに来ましたよ。怒りを鎮めてくれませんか?」
「ふぅ・はぁあ・・ ああああああああああああああああ!!!」
意味の分からない絶叫とともに俺は再び大地へと叩きつける。
俺と神獣の前足を中心に地面が沈み込んだ。
神獣の追撃は止まらない。
神獣は俺を前足でつかみ取ると、空へと投げた。
空高く舞った俺は浮遊感ともに満天の星空をみた。
美しい。こんな星空を見た事が無かった。
暫しの停滞感。それは一瞬。上から物凄い力で薙ぎ払われた。
ドォンーーーーーーーーーーー!!
森の一部が俺と一緒に薙ぎ払われ消し飛んでいた。
俺は森がなくなり抉れた地面の中心で倒れ空を眺める。
そこに絶叫を続ける神獣の姿があった。
星空は尚美しくそこで怒れる闇を映し出していた。
その姿はあの日見た少女の両親と同じものに思えた。
「終わりだ、小僧。
この一撃でお前を許そう。」
遠く離れた神獣の声が耳元で聞こえる。
満天の星空に月が出来上がっていた。
ああ、美しい。本心でそう思った。
あれはきっと受けてはいけない…理解ができていた。
あれをくらえば、魂さえ砕け散る。
魂の洗浄は無理そうです…姫様。
心にそう囁きかけた。
―――満月の咆哮!!
神獣の咆哮が俺に向かってくる。
視界には満月がつれる極光 。俺は目を瞑り覚悟する。
「だめーーーーーーーーー!」
何時駆け付けたのか、クフェが俺に覆いかぶさる。
全く、困った従者様だ。逃げるにも間に合わないか。
俺はクフェを優しく抱いた。
「すまない、アレじゃ盾にもなれない」
そう言い残し、俺達は死の極光に触れるはずだった。
「盛り上がってるところ悪いが
貴様は大事な事を忘れているぞ。
私が担当した仕事をしくじると思うのか」
―――!?
そこには、黒髪を靡かせ極光を受け止める者がいた。
「お膳立てご苦労。
ここからは私の時間だ」
不敵に笑うそれは、間違いなく姫様の姿だった。
◇
姫様が極光を受け止める手を握った。
――― パリーン。
ガラスでも割れたかの様な甲高い音が辺りに広がる。
そこには極光の光はなく満天の星空が姿を取り戻していた。
「おいおい、私の時間と啖呵を切ったが思ったより小物だな。
なんだあれは?」
神獣が困惑したように姫様を見詰めている。
自身の最大の攻撃が片手で握りつぶされ
驚きと恐怖で動けなくなっている様だ。
「神獣クフェルメキアです」
「あれが神獣? 冗談だろ?
私にはブルブルと震える犬畜生にしか見えんぞ」
姫様がおどけた仕草で俺に返答する。
「やめて下さい。ここにはその娘がいます」
クフェを指し、それを抗議した。
クフェは姫様に見詰められガクガクと震えだす。
それどころか、倒れこみ嘔吐した。
こうなるとは思わず驚いたが、
俺は慌ててクフェの背中をさすた。
姫様が俺に向き直り、俺の傍まで来る。
そっと手を頭に乗せ目を閉じた。
「なんだこれは?
神の子の主人だと??
はっは?何かなこれは…
仕事が忙しくてちょっと目を離したすきに…」
姫様が顔が徐々に険しさを増していく。
俺の頭に乗せている手に力がこもる。
「興をそがれるとはこの事よ。
力をくれてやった恩を忘れ、私を裏切るか?」
少し寂しそうな顔をする姫様。
俺、姫様のそんな顔は見なくないな…
「裏切ってなどいないぞ?
ほら俺は姫様に触られてギンギンだ」
俺は姫様の手を取ると。
自身の股間へと押し付けた。
「な… 貴様…」
「安心しろ。
俺はお前を何時でも抱くぞ」
真顔で喋っていた。
姫様の手がプルプルと震えだす。
「恩を仇で返しおって…
貴様など生理的に無理だ――――――――――――――――!!」
「ギャー――――――――――!!」
二つの絶叫が辺りに響いた。
俺の大事な生殖器が握りつぶされていた。