第十三話
翌日になった。私は白い部屋の真ん中でぼんやりと座っていた。退屈だとは、思わなかった。暇になれば電源を切った。静の話なら、私は今日本部に送られるそうだ。悲しくはなかった。私はもう受け入れていた。二度とシュンに会えないことを、よくわかっていた。
ふと私は2014年に飛ばされる直前の、2044年のあの最後の日を思い出す。
アンドロイド達は人権を求め、デモを起こし国内でテロ活動を行った。対する人間は強硬の姿勢に出て、『アンドロイド更生法』を可決させた。内容は第一次世代アンドロイドの完全粛清。内戦が至るところで勃発した。当然私とドクターが住んでいた場所も、その例外ではなかった。
屋外からは爆発音や発砲音が鳴り響き、今なおアンドロイドと人間が終わらぬ戦いを繰り広げているようだった。
『夏燐だけでも逃げろ』
ドクターはそう言った。家の窓ガラスの割る音がする。誰かの悲鳴が聞こえる。
『ドクターは!? ドクターは行かないの!?』
私は叫んだ。このままここにいてはどこかの誰かに射殺されるのは目に見えていたから。
『俺はいい。行ったところで三十年前の俺がいるからな。一つの時間に同じ人間がいると、どんな異変があるかわからないんだ』
『そんなっ・・・・・・』
『夏燐、お前は俺の希望だ。そのことを忘れないでくれ』
ドクターはそう言って微笑むと、私をタイムマシンの中に閉じ込めた。
『嫌だよ、嫌だよドクター!!』
私の叫び声も虚しく、機械はどんどんエンジンの音を加速させていった。時空を飛び立つまさにその最後の瞬間まで、ドクターは笑っていた。
あの時と同じだ。満足にさよならも言えないまんま、私はシュンの元をまた去ろうとしてる。でもーー今回は事情が違う。なぜならまた会えるかもしれないから。私がずっと思っていたら、いつかきっとどこかでーーシュンに再会することができるから。そう思えば少しだけ強くなることができた。前向きになれた。
その時誰かの足音が、防音フィルタを通しても微弱に伝わってくる。トン、トン、トン・・・・・・シュンが迎えに来てくれたのではないか。私を助け出すために、何もかもを突破してここから連れ出してくれるのではないか。淡い幻想が頭を掠める。
がチャリ、ドアが開いた。私はほんの少し期待する。
「・・・・・・時間だ。行くぞ」
そこにいたのは静とその部下の数人だった。私は覚悟を決めて、立ち上がった。




