表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一之瀬夏燐は憧レル。  作者: 木邑 タクミ
27/33

十二話

「……」

 傘を差して路地を歩いた。風が強かった。こんな状態にあっても、澪奈はまだ諦めていなかった。東雲の気持ちは痛いほどよくわかった。すべてを見ていた澪奈には、ありありとその絶望を知ることができた。だが、あと二日もすれば夏燐の記憶はすべて抹消されるのだ。それまでに何としてでも東雲の協力を得なければならない――すべては計画のために。

 けれど、あの状態の東雲を説得することは、果たして可能なのだろうか。わからない。どんな言葉なら、彼を協力させることができるのだろう? まるで無策だ。自分らしくない。自分は心理学者なのではなかったか。こういうことにかけてはプロフェッショナルなのではなかったのか。自責の念と同時に言い訳を言う自分が生まれる。私は東雲くんと夏燐に対してかなり入れ込んでいるから、正常な判断をできなくなっているのよ、と。それは正しい。とても正しい。でも、説得しなくてはならない。

 ――初恋の人を忘れてしまうなんて、あまりにも辛すぎる。

 すべては夏燐のためだった。あの少女は澪奈にとって自身の子供にも等しいのだ。彼女は人間としての権利を否定され、記憶の消去すら行われようとしている。そんなことは、断じて認めてはならない。

 ――夏燐は人間だもの。

 そうだ、夏燐は人間なのだ。だから彼女にも人間としての権利があってしかるべきなのだ。カメラもコントローラもいらない一人間として、生活する権利を持つべきなのだ。それを踏みにじる静の行為を、断じて許してはならない。

 夏燐を救うために、東雲の協力が必要だ。

 すべてを話すべきではないか、ふと澪奈の頭に一つのアイデアが浮かんだ。夏燐が三十年後から来たアンドロイドであること、ゆえに東雲に対して事情を話せなかったこと、静に感情を操作されていたこと――東雲は夏燐に触れられなくなってしまうが、それでも、記憶を消されるよりはマシなのでは? いや、そもそもそんな話信じるわけがない。

 八方ふさがりだった。策がなかった。動くこともできない。いったいどうすれば夏燐を救えるのだろう? あと二日しかないというのに。あと……二日しかないというのに。……もう静の言いなりになった方がいいのではないだろうか?

 澪奈が絶望の波に襲われそうになったその時、彼女のケータイが鳴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ