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沿岸戦

作者: 九崎 要

今は使われていない倉庫街。かつては商業都市の一部として賑わったここもいまでは建物に植物が絡みつき、人気はない。が、今だけは違う。鋼鉄の巨人が3機、対峙している。「合衆国」製の汎用量産機、カッシーニとその近接戦闘カスタム機のカッシーニ・クローサー。その二機の目の前には「前世紀の遺物アンティーク」、ザントヴェルトが専用のブレードライフルを片手にいた。機能性志向の外見をしているカッシーニに対してザントヴェルトは装甲の継ぎ目が多く、その装甲自体もあまり厚くない。未来的な外見をしていた。

「俺がやる。少尉は援護を」

フリュードの駆るクローサーは背中にマウントしていた大剣を掴み、構える。ビーム兵器を使用可能とするセプチウムジェネレーターに接続され剣の両刃からビームが形成された。

「…了解」

ブレアはオールラウンド・ライフルを構え、答える。ザントヴェルトはバイザーを光らせ、ライフルを構えた。引き金を引くと同時に発射された光の塊をクローサーは大剣の腹で受け止めた。そのまま斬撃へと移行する。ブレアのカッシーニがライフルで行く手を阻み、その隙に一気に迫る。ザントヴェルトはそれをブレードライフルで受け止めつつ、もう片方の手にハンドライフルを持ち、カッシーニを狙う。ブレアは間一髪でそれを避けたが、弾が当たった倉庫にはライフルで空けられたような穴が穿たれた。

「ハンドガンの癖に…!」

ビームの出力を上げてブレードライフルを振り払うと大剣を横に薙ぐ。ザントヴェルトは機体を反らせて避けるとスラスターを噴かせて体勢を戻すとブレードで斬りつける。それをフリュードはバックステップでもって回避する。が、それは予想されていた動きだった。ブレードライフルから弾丸が撃ち出される。

「クソッ!」

大剣で防御を試みるが間に合いそうもない。ビームの刃でもブレードライフルから撃ちだされたペネトレイト・バレットを完全に防ぎきることはできない。ビームの刃によって表面が焦がされた弾丸が迫ってきて装甲に接触する。そのまま装甲を突き破る…はずだった。

「私ってばナイス援護!」

接触した弾丸はブレアのライフルの弾丸によって弾かれた。ザントヴェルトはそれを確認すると、さらにバレットを撃ちこみながら接近する。フリュードは大剣を使い弾丸を弾くが接近されてしまっては大剣の特性を生かせない。大剣を地面に突き立てて盾代わりとすると腕に増設された格納スペースからソニックブレードを取り出す。

「しかし!」

ブレードライフルをソニックブレードで受け止め、もう片方のブレードを胴体にねじ込んだ。それに呼応してブレアもザントヴェルトに撃ち込む。が、体をねじらせてダメージをを最小限に抑えたザントヴェルトはクローサーを蹴飛ばしてブレア機との距離を一気に詰めた。

「リュード…!」

ザントヴェルトの両足の一部が分離しサブアームとするとブレア機の胴体をサーベルとブレードでもって串刺しにした。ブレア機はそのまま機能を停止する。

「なっ…やりやがったな!クソ野郎!」

その瞬間にふと隊長のシグムント・ジュミナスの言葉がよぎる。

―このクローサーはもともとファリス大尉のカスタム機だった。だから彼に合わせた粒子解放機能がある。

「あれを使えば…」

奴を倒せる。しかし―

―しかしパイロットへの負荷が大きいし、使用後はまともに動けないから使うのはお勧めしない。

「リミッター解除だ」

その言葉とともに追加パーツのセプチウムジェネレーターをフル稼働させてリミッターを解除した。持続可能時間は60秒。それだけあれば十分だ。大地に突き立てた大剣を手に取ると剣の実体刃がパージされて内側から実体剣ともビームとも分からない剣が現れる。恐らくフル稼働しているジェネレーターからのエネルギーが圧縮された刃だ。すばやく抜き取り一気にザントヴェルトの元へ詰め寄る。

「速い…!」

想像以上の性能だ。背部に増設されたジェネレーターから微かに青い粒子が漏れ出している。クローサーはザントヴェルトが反応するより早くブレア機を串刺しにしていた2本のサブアームと右腕を切り落とした。それを確認するや否や、ザントヴェルトは回避行動に移り2発目の攻撃を避ける。距離を取ろうとハンドライフルで牽制しつつ後ろに下がるが、クローサーはそれを許さない。僅かな時間だけとはいえアンティークに匹敵する力を得たクローサーは追加装甲をパージし、更に加速する。

「こいつをくらえッ!」

放たれたのは斬撃ではなく突き。正確にコックピットを貫いた。ザントヴェルトはそのまま後ろに倒れる。

「はは…。やったか…」

クローサーはオーバーヒートしている。コックピット内もサウナのような暑さ…いや、熱さだ。機体の全ての排熱機構が解放されて、そこから蒸気がたちのぼっている。クローサーの機能のことごとくがダウンしており、モニターもまともに見れないが確かにコックピットをやった感覚があった。これは間違いない。

「一矢報いてやったぜ…ブレア」

静かにそう呟くとフリュード・ブレンダーの意識はそこで途切れた。

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