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榎沢さんの、裏表

 平賀、杉田家にはトラブルメーカーが居る。

 故意にせよそうでないにせよ。

 その発明で周りに迷惑をかけてしまう人が、沢山居るのだ。

 そして、時にそういう人達のところから、発明の技術が漏れてしまう事がある。

 キヨメさん達人造人間の持つ力を見ればわかる通り、その技術の危険度は半端じゃない。

 それがもし、悪意を持つ者の手に渡ったら大変な事になる。

 そういった様々なトラブルへの対処の為に作られたのが、平賀対策部だ。

 その業務内容から考えれば当たり前だが、平賀対策部の人達はいくつかの発明品を手に入れている。

 ヨリの事が見えていたのはそのせいだ。

 ……ちなみにこの対策部。

 当初は国際組織としての設立を考えられていたのだが、どこの国も運よく発明品や技術を手に入れられた場合、自国のみで独占したいと考え、その話はすぐに無くなった。




「へぇ~、そういう事なんだぁ……」

「ざっと簡単に説明するとな」


 車中でちわさんとヨリに、平賀対策部について大雑把な説明をする。


「……ぁ……ら……ん」

「それに補足させていただきますと」


 榎沢さんが車を運転しながら補足説明をしてくれる。


「私達のお仕事は、創太君達とこうして直接やり取りをして、情報交換や交渉をしたり、あるいは超技術によって発生した様々な事件や事故に対して対処したりと、本当に幅広い業務を行っています。なので皆さんも、もし何かそういう類のトラブルを見かけたり、自分自身がそういうトラブルに巻き込まれる事がありましたら、是非私達に相談して下さいね」

「はーい」


 ちわさんが素直な返事をする。

 ちなみに今は車の中だ。

 運転を榎沢さんがして、助手席に沖さんが座っている。

 後ろには運転席側から順番に、俺、ヨリ、ちわさん。

 ロボットは車の上に乗せている。

 特に何もせず、本当にただ乗せているだけなのだが、謎固定がされていて走っていても落下しない。

 つか、この車レクサスだろ?

 そんな無造作に扱っていいのかよ。

 ロボットなんて乗せて、傷とかへこみでも付いたらどうするんだよ。


「どうかしましたか? 創太君」

「いえ。…………何だかんだで榎沢さんが担当になってから、もう一年以上も経ったんだなーと思って」


 言って修理代を請求されても困るので、適当な事を言う。


「そうですねぇ……。思い出してみると、一年間色々とありましたねぇ……。…………本当に、色々と。……ふふっ」

「………………」


 意味深な言い方しないで下さい。


「何創太様その顔。赤くない? 気になるんだけど」

「な、何も無いっての。ちわさん睨むなよ」


 ちわさんのジト目。

 ……正直ちょっと可愛い。


「……ふ、ぁ……ぇおっ……お……」

「あ、あのぉ~……。ちょっといいですか? 創太君」

「はい?」


 沖さんが困惑した声で話しかけてきた。


「さっきから気になっていたんですけど。何でヨリさんの口の中に、指を入れているんですか?」

「え?」


 言われて気付いた。


「えほっ……ぁ……ぅ」

「あれ!? いつの間に!?」

「え!? 無意識だったんですか!?」


 沖さんが驚くのも無理もない。

 いつの間にか俺は、隣に座るヨリの口の中に指を深く突っ込んで、口内を思いっきり蹂躙していた。

 指で舌を挟んで引っ張ったり、指先で弾いたり。

 時に喉奥まで深く指を差し込んでえずかせたりすると、ぶるるっとヨリの体が震える。

 口内の刺激によって、ヨリの小さい口からはよだれが溢れてたらたらと流れ落ち、彼女の服と俺の手をべちょべちょに汚していた。


「ご、ごめんヨリ!」

「ぁう……ぇぇ……」


 ヨリの口の中は、とても熱くて柔らかい。

 喉の奥に指を入れて舌の奥をきゅっと押すと、おえっとえずく。

 その時に喉が締まって、差し込んでいた指がとても気持ちい――


「っておい俺!」


 慌てて口から指を抜く。

 本当に油断も隙も無い。

 無意識に虐めてしまう。


「げほ、えほっ……」

「ヨ、ヨリごめんな? 大丈夫か?」

「ん……ぅん……」

「ていうか言えよお前も……こんな事されてたら……」

「けほっ……らって……。そうたさま、楽しそうだったから……」

「俺楽しそうだった!?」

「あはははははっ、創太様、すっかりヨリにやられちゃってるね~」

「笑い事じゃねぇよ……。ちわさんもヨリの力の事、知ってたのか?」

「知ってるよ~。けどその力、人造人間には効かないから私には関係無いかな」


 そういやキヨメさんもヨリの事、特には虐めてなかったな。

 キヨメさんとちわさんが戦った時も催眠が互いに効かなかったみたいだし。

 こういう系統の力は、人造人間同士には通じないのか。


「…………」


 そんな俺達のやり取りを、榎沢さんがバックミラー越しに見ている。

 情報を盗み聞こうとしているのだろう。

 下手に直接聞き出すより、こうした雑談の中からの方が色々と仕入れられるという事か。

 油断も隙も無い。


「………………」


(ゲ)


 目が合った。

 そこで後ろめたい表情をするでも誤魔化す表情をするでも無く、楽しそうな笑みを浮かべる。

 俺が考えている事を察して、その上でこの顔。

 嫌な人だ。


「そろそろ着くね」


 ちわさんの言葉に外を見ると、確かにもうすぐ俺の家だ。


「停めるのはいつもの所でいいですか?」

「はい。いつもの所で」


 榎沢さんはうちに何度も来ているので、いつもの所で通じる。

 そのいつも停める場所に車を停めると、皆降りて家の中に入る。

 そして、客間に榎沢さんと沖さんを案内してから、さてどうするかと悩む事になった。

 お茶、いつも光に出してもらっていたから、どこに何があるのかわからない。

 せめてキヨメさんが居ればどうにかなったのだろうが。

 肝心な時に何故か居ない。


(……使えない)


 にしても困った。

 まさか水道水を出す訳にもいかんし。


(冷蔵庫に何か入ってなかったか?)


 開けてみると、中にペットボトルのお茶が入ってた。


「これでいいか」


 すると今度は持って行く為のお盆の場所がわからない。


「あ~、クソッ!」


 何でもかんでも光に頼りっきりにするのは止めよう。

 俺は光が居ないと本当に何も出来ないのだという事がよくわかった。

 その後、何とか見付けたお盆を使い、客間にお茶を持っていく。

 お茶菓子は……勘弁して貰おう。


「どうぞ」

「あ、どもー、お構いなくー」

「……ちわさんは構えよ。つか手伝えよ」


 皆にお茶を出した後に、座る。


「さて創太君。では早速ですけど」


 いただきます、とお茶に少し口を付けた後、榎沢さんが威圧感のある微笑みを浮かべながら言ってくる。


「どういう事、なんですかね?」

「……どういう事って、何がですか?」

「先程車に乗る前にも言いましたけど。私、何度も言っていますよね? 新しく発明品が送られて来たら、随時連絡して下さいって。面倒ならメールだけでもいいので、とりあえず連絡は必ずして下さいって」

「や、ですからそれはですね?」

「あ、先輩。私お茶菓子買ってきます」

「あー、はいはーい。私もお付き合いしまーす」

「じゃあ私も行く」

「え!? ちょ、お前ら!」


 榎沢さんの説教が始まるなり、突然皆がわざとらしく逃げ出し始めた。


「泉ちゃん。お菓子買ったらちゃんと領収書貰っておいてね? じゃないと自腹になっちゃうからね?」

「この位なら別に自腹でも良いんですけど、了解です」

「じゃあ創太様、行ってくるねー」

「そうたさま、がんばって」


(ざけんな! 逃げんな! あとがんばってって何だよ!)


 だが、奴らは呼びとめる間もなくあっと言う間に家を出てしまい、すぐに俺は榎沢さんと二人きりになってしまった。


「………………」

「………………」


 俺にとってだけ、気まずい雰囲気になる。


「…………ふふ」

「っ!」


 榎沢さんの笑いに、思わずビクッと震えてしまう。

 すると彼女は、そんな俺の様子を嬉しそうな顔で見ながら立ち上がり、こっちに近づいてくる。


「な、なんすか!」

「なんすか、じゃないよねー? 創太くん」


 二人っきりになった途端、榎沢さんの口調が砕ける。


「全く……。何回言えばわかるのかなぁ~? 創太くん……はっ」

「え榎沢さん!? ちょちょっと!」


 ストッキングを履いた足を上げると、俺の股間にソッと乗せてくる。


「だ、駄目ですってば!」


 そして半立ちしてきたソレを、足の親指と人差し指の先で挟む様にして、優しく擦り始める。


「何が駄目なの? 私、いつも言ってるでしょ? 創太君が本当に嫌がる様なら、こういう事しないって」

「嫌がって、ますよ……」

「本当に? 私、足にそこまで体重かけてないし、逃げようと思えばいくらでも逃げられると思うけど?」

「…………」


 これだから、俺はこの人の事が苦手なんだ。

 榎沢莉緒さん。

 この人は俺と二人きりの時、こうして様々な度を越えたセクハラを仕掛けてくる。

 けど、他の人が居る時や他の人と接する時は普通に常識人のフリをするので、周りはこの人の本性を知らない。


「さて、と。じゃあ改めて確認するけど」

「な、何をですか……?」

「今回創太君の所に送られてきた発明品は、全部でいくつなのかな?」

「この状況でそれ聞くんすか!?」

「ほぉら、早くぅ」

「ぁあ!」


 どことは言えないが、先端の辺りをギュッと足の指で今までよりも強く挟み、シュシュシュッ、と素早く擦られる。


「わ、わかりました、言いますから!」

「はぁい」


 何なんだよ、もう……。


「榎沢さんに伝えていないのは、キヨメさんと、ちわさん――とォ! え、榎沢さん!」

「はーい、ごめんねー?」


 グリッと強くやってきやがった。


「あ、とはぁ! 今日来たヨリと……まだ見てないですけど、何かヨリが日和に頼まれて持って来たの。それだけ、です!」

「本当に?」

「本当です!」

「嘘ついてない?」

「ついてないですよ!」

「忘れてたりは?」

「しません!」


 どんだけ信用無いんだ、この人は。


「じゃあ、もう一回復唱」

「復唱って……。じゃあ、もう一回言います! キヨメさんと、ちわさんと、ヨリと、ヨリの持ってきた何か! 今回うちに来た発明品はそれだけです!」

「はい、了解です」

「てチョッ!? ちょ!」

「ご褒美だよ~」


 言いながら、グリグリと足でこねくり回す様に弄られる。


「何がご褒美で……ん、ぁ……!」

「おや? 足の裏、熱くなってきた」


 嬉しそうな顔をするな。

 ……だって、仕方ないだろ?

 この角度からだと、榎沢さんのスカートの中が丸見えなのだ。

 ほどよく柔らかそうで綺麗な足と、ストッキング越しのエロい下着。

 太ももやふくらはぎのムチッとした肉付きが同級生達とは違い、何というか、いやらしい。

 興奮するなという方が無理だ。

 完全に反応してしまった俺の股間のソレを、今度は足の裏全体でさっきよりも強めに、踏むようにしながら擦ってくる。


「ま、待って下さい榎沢さん……。本当に、本当にこれはヤバいですって……」

「なにがー?」

「何がって……榎沢さん!」


 すっとぼけた顔と声がムカつく。


「ん~?」


 そして全然止めてくれない。


「いい加減に……して下さい!」

「きゃっ」


 これ以上擦られ続けると本当にヤバい。

 止めさせるために、身を起こしながら榎沢さんの足を掴んで引っ張る。

 俺の方に倒れ込んできた榎沢さんを抱き止めると、背筋にゾクッと痺れるような感覚を覚える、甘い匂いがした。


(うわぁ……)


 大人の女性の香り。

 最近色々な女の子と接近する機会があったが、こんなにエロい、生々しい匂いは無かった。

 やっぱり大人の女性は違う。

 抱きしめた感触もだ。

 脂肪や筋肉の付き方が大人は違うのだろう。

 体型は細く見えるのに、骨ばったか細い感じが無く、とにかく全身が柔らかい。

 押し潰されたボリューム満点の胸の感触にも、欲望まみれのよくない考えが浮かんでしまう。


「え、榎沢さん。俺だって年頃の男なんですから、こんな挑発みたいな事してたらこうやって仕返しされたりするんですよ」


 首元に顔を埋める。

 鼻腔一杯に広がる榎沢さんの匂い。


「榎沢さんにしてみたら俺なんかまだガキにしか見えないんでしょうけど、体格だけならもう女の人には負けないんです。油断してたら痛い目見ますよ」


 からかわれるのが悔しくて、なんとか言ってやった。

 内心緊張でバクバクだ。

 けど、言った事は事実だ。

 こんな風に挑発され続けたら、いい加減俺にだって限界は来る。


「…………榎沢さん?」


 やり過ぎたか?

 榎沢さんが身じろぎひとつせず、言葉も発さず、ただされるがままになっている。


「あの……」

「…………ン、フッ」

「あ!?」


 と思ったら、俺の腕の中でぷるぷると震えはじめる。


(笑ってやがる!)


「創太君可愛い過ぎるよ~、もう」

「~~~~っ」


 馬鹿にされてたんだ。

 クソッ、悔しい!


「こんなに密着してるんだから、心臓ドックンドックン緊張してるのがバレバレ」

「榎沢さん!」

「あら?」


 その場に押し倒す。


「マ、マジで甘く見ないで下さいよ? キヨメさん達が来てから、俺だって色々経験してきたんです」


 …………最後までした事は無いけど。


「だから、こんな事だって……」

「ぁ、」


 榎沢さんの柔らかそうな唇に、自分の唇を近づける。



 ドサッ



「………………」


 動きが止まる。

 嫌な音がした。

 ビニール袋を、落とした音。


「………………」


 ゆっくりと音のした方を向くと、買い物に行っていた皆がいつの間にか帰ってきていた。


「………………創太様ー。それは納得いかなーい」


 頬を膨らませて不機嫌そうな表情のちわさん。


「そうたさま……」


 涙目で悲しそうな表情のヨリ。


「わー。先輩が押し倒されてるー」


 少々の驚きはあるものの、割とどうでもよさそうな沖さん。


「違わないけど……違うんだ」


 俺の言い訳は、全く何の意味も持たなかった。

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