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番外編17 リハビリ用に海外版

いろいろと壊れてますのでリハビリなのです。

マッチ。売りの少女





 クリスマスも近い雪の降る年の瀬に、道ばたでマッチョを売る少女がいました。

「マッチョはいりませんか? マッチョはいりませんか?」


 売り切って帰らないと、父親に怒られてしまいます。

 お仕置きに暗い地下のジムで父親の下手なポージングを朝まで見せられるのは少女にとって苦痛以外の何物でもありません。

 でも年の瀬の忙しい中、彼女に目を向ける人はいませんでした。


「何、あの子? 若いのに頭がいっちゃってんの? かわいそうに……」

「関わっちゃ駄目よ。さっさと行きましょう!」


「ねえ、ママぁ、あれな~に?」

「シッ! 見ちゃだめ!」


「ヤベェ、俺、いま目があっちゃったかも?」

「馬鹿! 下向いて歩けよ!」


 愛くるしい、ではなく、暑苦しいマッチョ達と貧弱な腹筋の少女に世間の人々は冷たい態度を取って通り過ぎていきます。


 いよいよ雪は降り積もり、人影は少なくなってきます。

 あまりの寒さに耐えかねた少女は、思わず売り物のマッチョを一人選んで火を付けました。

 大会が近づき、体中にオイルを塗ったマッチョは実によく燃えます。


 疲れ切った少女は炎の中に幻影を見ました。


 暑苦しいジムの中で、火がついたマッチョはカールリストアップを決めています。

 負荷をしっかりかけながらも、きちんとインターバルを取り、上腕二頭筋が鍛えられる様には思わずため息が出ます。

 幻影の中に後輩マッチョも現れ、

「おっ、先輩、相変わらず凄いッスね。でも、俺も負けられませんよ」

 となど言いながら、こちらも緩やかなシットアップを決めていきます。

 ジムを熱気が包み、少女の体は温かくなりました。


 しかし、時間が経つとマッチョは燃え尽きてしまいます。

 残ったのは真っ白な灰と、何故かいきなり現れてレフリーに右手を挙げられながらも老人のように白髪化したホセ・メンドーサだけです。


 そこで彼女はもう一人のマッチョに火を付けました。


 すると、そこには大量のプロテインとミルクを混ぜ合わせてシェイクするマッチョの姿が!


「ああ、おいしそう!」

 比率は、ミルク12対プロテイン1の理想的な割合です。

 濃いめに作れば効果が有ると思い込み吸収率を考えぬミルク10:プロテイン1などという邪道レシピなどどこにもありませんが、それこそがこの光景を幻影だと教えてくれるのが悲しいところです。


 時間が経つとやはりマッチョは燃え尽きます。

 永遠に続けられるポージングなどありはしないのです。


 ふと雪の上をみると、そこにはうち捨てられたステロイド剤があります。

 正当なビルダーにとってこれはあってはならないものです。

 そっと懐にしまいました。


 いくつものマッチョを使い切り、ついに少女は最後のマッチョに火を付けます。


 ああ、すると何と言うことでしょう。

 そこには夢に見た世界大会の会場が現れたではありませんか!!


 見事なポージング決めるマッチョに周りから声援が飛びます。


「来てるッス! 先輩、来てるッスよ!」

「切れてます! バッチリ切れてますよ!」

「おお~、スゲェ! そこで7秒維持しますかぁ~!」


 幸せな幻を見ながらそっと目を閉じた少女。



 翌朝、日が昇った路上には……  覚醒した一人の女性ビルダーが!


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