異世界に勇者が呼び出される理由のごく一部
「あ~、また出やがった! 糞が! PKばっかやってんじゃねーよ。
運営、何やってんだよ。 こいつら垢banしろよ!」
暗い部屋の中、モニタの明かりに向かって毒ずく一人の女、周りにはポテトチップスの袋やペットボトルを詰め込んだゴミ袋が散乱している。
いや、表現に少々間違いが有った。
毒づいているのは『女』ではない、『女神』だった。
床を思いっきり踏みつける。
いわゆる床ドンという奴だ。
ドアがそっと開く。
「ねえ、エレちゃん。 今ならまだやり直せるから・・・・・・」
「っせーよ、ババア! 飯置いたらさっさと出てけ!」
空のペットボトルを投げつけると、少し外れて壁に当たった。
衝撃でガラスケースの中の納戸ロイドが倒れる。
「あ、レアものの『はちゅねミカ』が・・・・・・、死ね、ババア!」
彼女の名はエレーネ、本来は平和を司る神である。
・・・・・・のだが、今やこの有様。
昔は、彼女は神々の間でも期待の星であった。
生まれた時から美しく、慈愛に満ちた存在として大地の女神の後を継ぎ、この世界を治めるであろうと言われていたのだが、いつからだろう・・・・・・
高い能力はある筈なのだが何をやっても上手くいかず、運が悪いとしか言いようが無いほど戦乱を収める最後の一手に失敗してしまう。
いくら頑張っても人間の世界に平和は訪れない。
遂には引きこもって2千年。
髪は伸び放題でボサボサ、身体からは妙な臭いがする。
ペットボトルにため込んだ黄色い液体は・・・・・・、いや、これについては触れまい。
ともかく、異世界のオンラインゲームに嵌ってから、彼女の引きこもりには加速が付き、最早廃人、いや廃神と言えた。
「大体、社会が悪いんだよ。 あたしだって努力はしたさ!」
ブツブツと不満ばかり言っている。
と、何やら気配がする。
振り向くと、ドアの下から紙が一枚差し込まれた。
「なんだぁ?」
拾い上げる。
そこにはこう書かれていた。
“エレちゃんへ、
お母さん、もう疲れました。
あなたを信仰しているのは、今ではこの村の人たちだけです。
魔王も復活し、世界は混沌に陥っています。
この世界は、あと300年、あなたの担当ですので頑張って下さい。
あと、この村の信仰心が消えれば・・・・・・、あなたも消えます。
おかあさん、天界に返らせて頂きます。
がんばってね “
「はぁ?」
『え~っと、魔王が復活して、あたしの力はこの村の防御力だけ。
で世界を救わないとあたしが消える、ってか?』
『・・・・・・/(^o^)\フッジサーン!』
『違~う! \(^o^)/オワタ! ああ~、そりゃ、どうでも良いんだよ!』
床に紙を叩き付けると慌ててPCに向かう。
『スレ立て依頼 “2千年ニートしてたら神生詰みそう! 誰かぽすけて!”』
何処までも駄目ダメであった・・・・・・
ネタが思いつかないので、プロット練習場になっとる。
すいません。
なお、「PK」とはプレイヤー・キルの略で、オンラインゲーム参加者をぶっ倒して経験値を上げる行為だそうです。 垢banはアカウント停止。
(ゲーム知らんわ)