ジェジェジェの奇妙な冒険3 2/2
地獄の描写がちょっと血なまぐさいですが、元々、地獄というのは怖くないと意味がないので、このまま行きます。
よろしくお願いします。
ジェジェジェは帰れるのでしょうか?
『地獄巡り』(後編)
ジェフリー・ジェラルドフィッツ・ジェンスン情報少尉
親しい人は彼を『ジェジェジェ』と呼んだ。
生前、彼は貴族であった。
名誉を最も大切に生きてきた。
此の様な事には我慢ならない。
よって異議申し立てをする。
「おい、お前らよ! いつまで見てんのよ!?」
怒りのジェジェジェの抗議ではあるが、牛頭・馬頭コンビの耳には全く届いていない。
浄玻璃鏡を覗いて、リタが看病をしつつも、熱を下げると称してはジェジェジェのケツにネギを突っ込む様子を見て大笑いをしているのだ。
「おいおい、もう5本目だぜ!」
「あの女、すげえぇな、これだけ笑わせてくれた奴、初めて見たわ!」
「おお、もう一本持ったぞ!」
ジェジェジェは思わず叫ぶ。
「殺してくれ!」
「もう死んでるつーのw」
「だよね~」
「これが地獄か! 話聞け!」
怒鳴るジェジェジェに2頭が答える。
「馬耳東風、な~んつってw」
「地獄を牛耳るの? ねえ牛耳るの?」
「むかつくわ~、こいつらホントむかつく!」
「地獄で咽せる?」
「ねえ、咽せちゃうの?」
どうやら牛頭・馬頭コンビは久々に仕事以外で人間に会う事になったため、テンションが上がりまくっているようだ。
無駄に煽ってくる。
「もう、早く帰せよ!」
「早く帰らないと、このままじゃガバガバだからね~www」
「河馬って漢字だけどさ、水牛+馬って感じしない?」
「お前等、いい加減にしろ!」
****************
結局、一度地獄に堕ちた以上は数時間でも責め苦を味わって帰らなくてはならないらしい。
牛頭・馬頭はジェジェジェがそうならないように時間稼ぎをしていたのだが、ジェジェジェが騒いだため、他の獄卒に見咎められて彼を地獄に連れて行かざるを得なくなった。
「あ~、なんつ~か、マジ、スマン!」
素直に謝るジェジェジェだが、“時既に遅し”である。
「馬っ鹿だねぇ、あそこで遊んでりゃ、時間切れだったのに」
「な~!」
「遊ばれてる、の間違いだろ・・・・・・」
よく考えれば、この2頭が煽るから騒ぎになったのだ。
何故、詫びなきゃならん、と今更に腹立たしくなる。
悔しさで項垂れるジェジェジェに牛頭・馬頭が呼び掛ける。
どうやら地獄の『現場』に到着したようだ。
まず牛頭が口を開く。
「最初に説明して於くが、このドアの向こうでは時間の流れが違う。
こっちの1時間があっちの100年ぐらいだ」
「そんなに責められたら生きてられないだろ!」
怒鳴るジェジェジェに馬頭が呆れたように言葉を返す。
「だから、ここに来る奴はもう死んだ奴ばかりでしょ!
痛みで狂わないようにしてあるし、身体を切り刻まれても再生するよ」
「嫌すぎるぅぅぅぅ!」
思わず涙声になるジェジェジェである。
「と言ってもお前さんの場合特殊だから、10分で出してやるよ」
「それでも中で17年だろ!」
「あとな、地獄は選ばせてやるし、次に仮死状態の奴が来たら途中でも開放だよ」
「ほう!」
喜ぶジェジェジェに牛頭が言う処では、世界中で仮死状態になる人間は多いだろうから内部時間でも数日では出られるだろうと。
今、中に1人の仮死状態の奴らが居るが、余りまともな奴ではないのでジェジェジェと変わらせたく無かったのだそうだ。
「なるほど! で、選べる地獄ってのは?」
そう尋ねると、目の前にドアがふたつ現れた。
右のドアを牛頭が開く。
部屋の中を覗いてジェジェジェはそのまま気絶しそうになるが、地獄ではそれも許され無いようだ。
ドアの内部には無限の空間が広がっており、其処では無数の亡者が角を生やした東洋の鬼に切り刻まれている。
酷いのになると、石臼ですりつぶされたり、生きたまま犬に内臓を喰われている。
だが、切り刻まれても、挽肉になっても一瞬で生き返る。
内臓を犬に食われている亡者など、内臓が延々と再生しているため、その一瞬の死すら訪れないのだ。
血の池で虫に身体を食いちぎられた亡者が陸に逃げれば、そこには鬼が待ち構えていて、針の山へと追い立てていく。
正しく悪夢である。
「ここ、行かなくちゃならないの・・・・・・?」
震える声でジェジェジェが尋ねると、
馬頭が「もうひとつあるよ」、と左のドアを開く。
其処を見て、ジェジェジェは跳び上がって喜んだ。
確かに此処も地獄だろう。
だが、選ぶなら絶対に此処しかない、と。
部屋の中には1人の男が椅子に縛り付けられている。
醜塊を絵に描いたような老人である。
もしかしたら若いのかも知れないが、地獄の責め苦によってあの様になったのかも知れない、とジェジェジェは思う。
老人は見ているだけでも吐き気を催すような生理的嫌悪感が収まらない存在だ。
衰弱して、息も絶え絶えであり、喉の下からヒューヒューと風のような呼吸音がやけに部屋中に響く。
だが、その目だけは爛々としており、また身体から発する臭いで、こちらの鼻が曲がりそうである。
先程の地獄と異なり、この部屋は狭く、そして存在するのは2人だけ。
椅子に縛り付けられ、息も絶え絶えの全裸の老人。
そして、1人の若い女。
やはりこちらも生まれたままの姿である。
金髪、白く美しい肌、張りのある胸元。
ドアが開いた時、女は一瞬だけ此方を向いた。
顔立ちも素晴らしい。 目も冷めるような美女、とはこの事だろう。
完璧である。
今、その女は椅子に縛り付けられた老人の足の間に座り込み、老人の逸物に□で奉仕し続けている。
一心不乱、と云う言葉が当てはまる程だ。
陰魔、と呼ばれる魔物が居ると聞く。 その類であろうか。
なるほど、老人が此処を選んだ理由は分かる。
もしかしたら最初は若かったのかも知れない。
しかし、しかしだ。
最後はあの様な姿にさせられると分かっていても、この部屋を選ばぬ男など居まい!
『絶対、此処! ここ以外は絶対に行かない!』
高らかにジェジェジェは宣言する。
そのジェジェジェをみて牛頭は妙な顔をした。
「1回決めたら、変えられないよ。
隣の地獄だって、亡者が狂わないように痛みはかなり押さえてあるんだから、
見た目ほど悪くはないんだがなぁ・・・・・」
馬頭は肩を竦めたがジェジェジェに同意してくれた。
「まあ、いいじゃん。 本人が良いって言ってるんだから」
その通り、価値観は自由だ!
馬頭、お前良い事言うじゃないか!
ジェジェジェは馬頭に感謝である。
牛頭は“わかった”と頷くと、左のドアをもう一度開けて、中に呼び掛ける。
「お~い、替わりが来たぞ。 お前の罪は償われた!」
その声が室内に響き渡ると、
「やった~!」
と言う声と共に部屋から金髪美女が跳び出して来た。
次回は、ちょっと別の処で使ったお話を載せたいと思います。
ょぅじょのイラストに挑戦してみました。