ジェジェジェの奇妙な冒険3 1/2
こんな話でもお気に入りに入れて下さる方がいて下さって嬉しいです。
今回は前後編に分けます。
「星を追う者たち」は書いてる最中です。
ついつい、こっちを書いちゃいました。 すいません。
『地獄巡り』(前編)
ジェフリー・ジェラルドフィッツ・ジェンスン情報少尉
親しい人は彼を『ジェジェジェ』と呼ぶ。
彼は貴族である。
名誉を最も大切に生きてきた。
よって、この様な場所に居て良い筈がない。
いや、神の意志は人には計り知れないものだ、望みが叶わなくとも不満はない。
だが、いくら何でもこれはあんまりではないか。
異議申し立てをする事にする。
「なあ、いろんな意味でおかしいだろ?」
「何がだ?」
ジェジェジェの異議に鉄の棒を持った黒い影が問い返してくる。
ジェジェジェが今居る場所は『地獄』である。
砂漠の街『キャメルーん』における工作活動中にフランスの組織と銃撃戦になった。
どうやらその時に死んでしまったらしい。
まあ、其処までは良い。
色々と心残りはあるが、それはそれで軍人になった時から覚悟していた事だ。
仕方在るまい。
天国に行けない事も先程の様にやむを得ない事と納得した。
だが、何故だ?
何故、この地獄には地獄の獄卒“牛頭”と”馬頭“が居るのだ?
「俺ゃあ、仏教徒じゃね-ぞ!
由緒正しい英国国教会だ!
普通は地獄と言えば、まずは地獄の番犬とご対面の筈だろうが!
何で犬じゃなくて、牛と馬なんだよ!」
「んな事、言われてもなぁ・・・・・・」
「だよなぁ、お前等が悪いんだぜ!」
牛頭と馬頭はブツブツとぼやく。
「どゆことよ?」
“お前等”と複数形で来た事には何やら深い事情がありそうだ。
だが、聞いてびっくりである。
クリスチャンの地獄は今、満員だと言う。
遂には処理能力を超えたため、他の宗教で空きのある地獄に仕事が外注されているのだとも。
「な、何で?」
驚くジェジェジェに牛頭、馬頭共にあきれ顔である。
「ったりまえだろうが!」
「お前等クリスチャンって、世界中でどんだけ現地人を殺してると思ってんの?
此処200年でお前等の天国に行った奴なんてひとりも居ないよ」
「ええっ~!!」
「まあ、悪い事してない奴は出来るだけ早く転生させてるんだけどな」
「でも、良い所にばっかり転生させられる訳でもないしねぇ」
溜息を吐く牛と馬。 シュールである。
「あ~、な~るほどだねぇ・・・・・・」
言われてみれば、とジェジェジェも気付く。
死んでみて彼も現世の理屈から開放され、大きく物事が見えるようになったようだ。
ここ200年白人の歴史は侵略と略奪の歴史である。
それも神の名の下にそれを行ってきたのだ。
これでは仕方あるまい。
納得したジェジェジェの肩に馬頭が手を置き、付け加える。
「あと、ラクダな!」
「ええ~、あれも!?」
「そら、そうよ」
牛頭がゲラゲラと笑った。
「未遂でしょ!!」
叫ぶジェジェジェに馬頭も笑った。
「うん、だから今のは冗談!」
ほっとした。
いくら何でも、アレは罪状に入れて欲しくない。
リタに感謝である。
ふと、思い付いて尋ねる。
「そう言えば歴代の法王は?」
ジェジェジェの質問に、二頭は首を振って、
「聞かない方が良いだろう」
と言う。 納得だ。
気持ちを切り替える。
「で、結局俺はどうなるの?」
いかに国家のためとは云え、植民地政策を推し進めてきたのだ。
地獄も相当きついだろうな、と嫌な気分だ。
だが、牛頭、馬頭は妙な事を言い出した。
「まあ、暫くの間だけだし遊んで行けよ」
「は?」
聞けばジェジェジェは未だ完全に死んだ訳ではなく、鼓動も弱いが数時間後には蘇生するだろうと言う。
しかし、半分死んだ事に間違いは無いので、一応地獄に送られた訳だ。
「生き返れるのか?」
「お前さんの“連れ”次第だな」
そう言って鏡を見せる。
浄玻璃鏡といって現世でしてきた事が分かるという。
今は現世そのものが写っているが、ベッドに寝かせられたジェジェジェをリタが甲斐甲斐しく世話をしていた。
ちょっとホロリとなる。
「生きて帰らなくっちゃな!」
そう言った途端に、リタが尿瓶を持ち上げると、ジェジェジェの”息子”を摘み、“ちっちぇ~”と笑う。
「生きて帰らなくっちゃな!」
台詞は同じだが、表情と口調が違う。
後ろで牛頭と馬頭が腹を抱えて笑っていた。
(後半に続く)