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ダンゴムシ

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/22


ランドセルサイズの大きなダンゴムシは


青年に恩返しがしたかった


だからボウリングの玉に偽装した



あやうくトラックに轢かれるところだった


道路の真ん中で、のそのそ歩いていたダンゴムシは、


接近するトラックに気付かなかった


青年が駆け寄り、ダンゴムシを端に寄せてくれた


ダンゴムシの頭を軽く撫でて


青年は去っていった



その青年は友人達とのボウリングで、


ガターを連発し


好きな子に良い所を見せられず、


落ち込んでいた




ダンゴムシは


丸まり


玉の一つに紛れ込み


青年が持とうとした玉と、さっと入れ替わった


気付いた青年に、つぶらな瞳と触覚で必死に訴えた


青年は驚き、恩返しに喜んだが


ダンゴムシの身体を心配した


しかし、その決然とした覚悟に心打たれ、受け入れた



ノロノロと転がりだした玉は、


速度を上げ豪速球となり


ストライクを連発した


青年の好きな子は驚き、喜び、拍手した


青年は嬉しくなった


それを見ながら、ダンゴムシも喜んだ



しかし、邪魔者が現れた


そこにいた知り合いの一人は、状況を憎々しげに見つめていた


彼は青年の好きな子を前から狙っていた


嫌がるのを無視して言い寄ったが


彼女から避けられるだけだった


彼は以前、牛に石をぶつけて遊んでいたら偶然、


牛に踏まれそうだった手のひらサイズのフンコロガシを


助けたことがあった


フンコロガシは今、恩返しのために


彼の懐に潜んでいた



彼はフンコロガシに耳打ちし


気付かれないようにレーンへ向かわせた



ダンゴムシはストライクに向けて


勢いよくレーンを転がる



と、その途中で、何かの力で引き寄せられるように


道を逸れた



フンコロガシがそこにいた



逆さのフンコロガシは両足でダンゴムシをキャッチし、


転がし、ガターに入れた


それが何度も続いた



ダンゴムシは避けようとするも


磁石に引き付けられる砂鉄のように


どうしてもフンコロガシの方へ引き付けられ


転がされた



勢いよく転がっても、


フンコロガシの見事な足さばきで簡単に止められた



フンコロガシは逆さで不敵に笑った


「俺に転がされて喜ばぬフンはいなかった。


お前も彼らと変わらない」




好きな子に慰められ、青年は落ち込んでいた


フンコロガシの主人は、青年を煽り、笑った



最終フレーム


青年の番



フンコロガシはもう、レーンの端で構えていた



ダンゴムシは必死に考えた


しかし、何も良い案は出なかった



万事休すだった



青年はダンゴムシに、


「無理しなくて良い。


転がりすぎて疲れただろう。


もうやめて、横になったら良い」


と気遣った




そう言われた瞬間


ダンゴムシの神経節に電撃が走った


幾つものボウリングの玉に目を走らせ


そして、フンコロガシを見た



青年を説得し、大丈夫であると示し


勝負を求めた



青年はダンゴムシの頭を軽く撫でて


その意志を受け入れた



青年の手から放たれたダンゴムシは


今までにない速度で転がり


フンコロガシへ突進した


フンコロガシは言った


「甘い。どんなに速くても


俺の足さばきの前では、どんな玉も無力だ」



衝突する直前


突然、ダンゴムシは大きく飛んだ



フンコロガシの頭上を飛んでいく


フンコロガシは目の前で突然飛んだ玉に、驚いた



驚いたフリをした。




「飛び越すとは、良いアイデアだったな。


だが、無駄だ」



フンコロガシは瞬時に後方に下がり


落下予想地点に移動した



ダンゴムシの落下する場所には


既にフンコロガシが構えていた



「これで、終わりだ」


フンコロガシは嘲笑った




だがそれさえも、


ダンゴムシは予想していた




落ちる瞬間、


フンコロガシの目の前で



ダンゴムシが、「開いた」



玉が、


小判型に変わった




青年の「横になったら」がヒントになった


玉である形に囚われていたが、そうである必要はない


自分はダンゴムシなのだから





フンコロガシは、思いもよらない事態に、


あっけにとられた。


そして、転がしたことのない玉ではないものを


どうすれば良いか分からず、


動けなかった。



次の瞬間、フンコロガシは


ダンゴムシの幾つもの足で捉えられ


再び丸まった体の中心で、


がっちり捕まり身動き出来なくなった



玉から


小判型


体を丸めてフンコロガシを包みこんで


また玉へ



それは時間にして


0.1秒


人間には気付かれない



ダンゴムシは勢いよく転がり


ガターから飛び上がり


全てのピンを倒した




興奮した好きな子に抱きつかれながら青年は


その子と一緒に歓声を上げた


フンコロガシの主人は


がっくり肩を落とし、


帰って行った



目を回したフンコロガシは


「フンの気持ちが初めて分かったよ。


今度からは優しく転がそう」


と言い残し、ふらふらしながら


主人の後を追って行った






その後、ダンゴムシは、


恩返しを終えて帰る所を


引き止められ



今は


青年の家の庭の自分の小屋で


美味しい落ち葉を食べながら


のんびりと暮らしている





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