第八十話 ユウマ・クスノキの断罪(後編)
観衆の視線が、断罪台の上の俺から、断罪台の前に移るのがわかった。
観衆だけではない。警備に目を光らせていた王国騎士や近衛兵たちまでも、職務を忘れたかのように断罪台の前の人物たちに視線を向けた。
もはや誰も俺を見ていない。彼らが見ているのは国王フリードリヒ、そして王政府の幹部たちだ。
「何だ? 何が起こっている?」
ジークフリートが異変に気づき狼狽える。
そのとき、先ほどまで俺に向けられていた怒号をも上回る大きな怒号が上がった。すべての観衆が口々に声を発していながらも、不思議な統制が取れているかのように、大声量で一つ一つの言葉を形成していた。
「王政府は嘘つきだ」「王政府は民を虐げている」「王政府は偽りの断罪を行っている」「身分差別を作ったのは王政府だ」「王政府は罪を償え」「王政府を破壊せよ!」
巨大な怪物が、王政府を非難していた。
「何なのだ、これは? おい、王国騎士団は何をしている? 王政府を非難する者らを捕えろ! 逆らうなら殺せ!」
国王フリードリヒが恐慌陥り、喚くが、当の王国騎士団も国王らを取り囲み、怪物の一部になって彼らを非難していた。
俺は国王の前に歩み寄り、確実に声が聞こえるように顔を近づけて言った。
「この場に、あなたを守ろうとする者は一人もおりません。あなたにはもう、何の権力もないということです」
俺は王政府を断罪する怪物をここに顕現させるためにあえて大事件を起こして、捕まったのだ。可能な限り多くの観衆を俺の視野の範囲内に集めるために。
「王都の民たちよ、おまえたちの怒りはわかった。ここに国王フリードリヒ、および王政府幹部らを断罪し、投獄する!」
俺がそう宣言すると、大きな歓声が上がる。
王国騎士たちが王政府の面々を次々と捕縛し、王政府と癒着していたと思しき聖教会の幹部らも捕えられた。王国騎士たちは彼らを王城内に連れ、一人残らず投獄した。
勝った……!
「王国の断罪は、ここに成った! 王都の民たちよ、おまえたちも、王政府に追随し、罪を重ねてきた罪人だ! 罪を償うため、これからは王都の外の民や虐げられてきた者たちのために生きよ!」
俺が観衆に宣告を行うと、怪物は一人一人の人間に戻って行くのだった。




