第七話 偽聖女の断罪1
家に帰る前に、ジークフリートに巡回の結果を報告しておこうと王城に戻った。
王城の門番に名乗ると、「ジークフリート様から宰相府に通すよう言われている」と、王城内に連れられていった。
生まれて初めて王城の敷地内に入れるという興奮は、ジークフリートと会う憂鬱さにより消し去られた。
宰相執務室のジークフリートは頭に包帯を過剰なほど巻いてターバンみたいになっていた。
俺への当てつけか、何かの冗談なのか……
「ジークフリート様、申し訳ありませんが、奴隷商は見つかりませんでした」
「まだ行っていないところ、あるんじゃないの?」
露骨に不満そうにジークフリートが言う。
「……だいたい行きました」
「そんなにすぐ王都中回れるわけないだろう。それに相手は人間なんだから移動しているのだ。一度行ったところにも何度も戻らないと」
そんなことしていたら一生終わらないじゃん。
「まあ、いい。頭の傷は侍医に治療させよう」
「嫌です」
ターバンにされるのは嫌だ。
「何?」
「いえ、つまり……失敗を戒めるために傷は見えるように残しておこうと思います」
ジークフリートは訝しそうな目で俺を見る。
「まあいい。そんなことより、次の断罪が決まった。極悪人を捕まえた」
「え?」
「聞こえなかったか? 断罪だ」
「誰が捕まえたんですか?」
「私が見つけた。ユウマが出かけた直後にな」
「え? じゃあ、足が痙攣するまで歩きまくって自分の頭に石をぶつける必要はなかったんですか?」
不機嫌だったはずのジークフリートがにやりと笑みを浮かべた。
すげえ腹立つ。
「で、どんな極悪人なんです、そいつは?」
嫌がらせを受けたとはいえ、断罪があるのであれば、また別の話だ。断罪趣味の血が騒ぐ。
「聖女を騙る偽物だ」
「また偽聖女ですか?」
「そうだ。王城前広場で、自分を『聖女』だと言って、怪我も病気もしていない元気な通行人を治癒しようとしている女がいてな、捕まえてきた」
「は? ただのつまらない詐欺師じゃないですか」
「ユウマ、『聖女』だと偽ることがどれだけ重大な罪なのかわかっていないのか? 聖女はそもそも聖教会が厳密な祝福適性試験を行って人格適性も見て、徹底的に精査した上で正式に承認されねばならん。なぜなら聖女は王国にとって重大な責任を……」
「そうでした、聖女を騙ることは国家反逆罪にも相当する重罪でしたね! そうだ、断罪だ! やったー」
「……まあ、わかっているならよい」
よし。長くなりそうなつまらない話をうまくブロックした。
「今回はユウマのスキルも不要だ。観客として楽しんで私の断罪ショーを見ておくがいい」
やったぜ。
「じゃあ、俺は役立たずなんで、もう『断罪・結社』をクビですね。残念だなぁ」
「何を言っているんだ? 何の成果も出していないのに辞めさせられるわけがないだろう」
何だと……?
成果を出さない=給料泥棒は成果を出すか、死ぬまで働け。
成果を出す=いなくなられると困るから死ぬまで働け。
社畜を逃さない定式がいつのまにか発動してしまっている……




