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【連載版】転生したら断罪の場でヤジを飛ばして石を投げるモブ平民だった  作者: Vou
第一章 量産型偽聖女編

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第十九話 名もなき断罪5

 俺に名前を呼ばれたクローデリアは、俺の手を握りながら涙を流し始めた。


 このところ、俺は何度この人を泣かせただろう。


「本当に申し訳ございません。クローデリア様のことを『どなたですか?』などと申してしまいました。何の申し開きもできません。モブ平民の、蟻以下の小さな脳みその記憶力でとにかく申し訳ございません。クローデリア様の剣の錆にしていただいても、もちろん構いません」


 俺はそれくらいのことをしでかしたのだ。


 しかし、恐縮しきった俺にクローデリアは泣きながら微笑みかけた。


「何を言っているのよ。私のことを忘れたのはあなたのせいではないし、むしろあなたは私を救ってくれたのよ。本当に、あなたは絶望の淵にいる私にいつも光を与えてくれるの」


「はい?」


 ひょっとしてクローデリアも頭がバグってる?


「できれば人を殺めたくはなかった……。でも仕方がなかったのよ」


「当たり前ですよ。大司教は王国民全員を殺すに等しいことをしようとしていた大罪人なんですから、死罪以外にないでしょう?

 聞いてくださいよ、この大歓声を。皆、極悪人の大司教を止めたクローデリア様を讃えていますよ。万が一、誰かがあなたを責めようと俺が死んでもクローデリア様を守ります」


「ありがとう、ユウマ」


 クローデリアがまた微笑む。


「しかしなぜ皆、大司教の言うことをついさっきまで信じてしまっていたのでしょう……王国民の偽聖女化を止めてくださったエリシア様まで断罪しようとして……」


 俺は断罪台の上に立つ「聖女」エリシアを見た。


「エリシアも『名喰い(ネーム・イーター)』を受けてしまっていたのね」


「名喰い?」


「そう、私とエリシア、そしてセラフィナが大司教のスキルで『名前』を奪われたの」


 うん? 名前って奪えるものなの?


「私も古い禁術の文献でそのスキルについて見たことがあっただけで、実在するとも思っていなかったんだけど、『名喰い』で名前を奪われると、その人の真名だけでなくて、その名の下で行われたすべてのことや影響したことがこの世からなかったことにされて、記録も記憶も消えてしまうの。その効果は絶対だから、どんなに記憶力がある人でも忘れてしまうのよ。だからユウマが私のことを忘れていても仕方ない。でも……」


 でもやっぱり腹が立ちましたよね?


「それでもあなたは『どうにかしてくれる』って言ってくれたのよ。信じられないことだわ。きっとあなたの魂が、私のことを忘れないでいてくれたのね。『絶対』の『名喰い』スキルでもそれは奪われなかった」


 何か良いように取ってくれているが……自分でもそれが正しいような気がしてきた。俺はクローデリアを不審に思いながらも、泣いていた彼女を見て助けてあげたいと思ったのは本心だ。


「セラフィナもエリシアも名前を奪われたことで事件そのものの記憶が失われて、大司教のしたことも忘れられたのよ。私も自分が何をされたのかわからなくて、名前もわからなくて絶望していたの。でもあなたがスキルで『名喰い』を示唆して犯人を示してくれたから、私も助かって、王国も救ったのよ」


「それは大げさですよ……」


「いいえ。おそらく大司教の本命は二回目の今回だったと思うの。一回目は慎重に進めようとしていたのに、セラフィナが私の断罪に失敗して捕まってしまったから、計画を進めざるを得なかったのね。セラフィナの最初の『祝福共有』はリュシアを狙って感染させて、ジークフリート様の目につくようにしたの。それでリュシアを断罪の場に立たせて一気に感染を広めた……そして私たちの目も、本当の『呪いの核』だったセラフィナではなく、リュシアに向いた……」


「でも一回目は、クローデリア様とエリシア様のおかげでその企みを止めることができました」


()()()のおかげもよ。そこはとても大事なところだから忘れないで。

 大司教は、一回目は止められてもよいと思っていたと思うの。むしろ、誰が計画の妨害になるのか、見極めるつもりだったのよ。それで、大司教は『剣姫』クローデリアと、『偽りの聖女』エリシアを見出して、私たちの名前を奪い、『呪い』の根源のセラフィナの名前も奪ったの。一番の脅威だったエリシアは命まで狙われて……。セラフィナは大司教が二回目の偽聖女化に備えてどこかに匿っているはずよ。彼女も『呪いの核』として大司教に都合良く使われるだけの女だったのね。

 『名喰い』はすでに名前を失った人間には使えないから、次のやり直しはない。だから一回目で()()()()妨害要因を排除する必要があったのね」


「その目論見はうまくいったわけですね」


 クローデリアがなぜか笑う。


「いいえ、失敗しているじゃないの。だから言ったでしょう? 大司教は『断罪の使徒』ユウマだけは見つけることができなかったの。その計画にとって最も大きな妨害要因をね。『名喰い』は相手の真名を含めて強く認識した相手でないと発動できないの。まさかあなたの罵声スキルが悪事の核心をつくような効果まであるとは知らなかったでしょうね」


 「断罪の使徒」ってまた大仰な二つ名を……俺なんて「断罪見物人」ユウマで十分ですよ……


 それにしても教養もあって頭も良くて武芸も達者で超美人で公爵令嬢って、女神様は不公平だな、おい。

 ……でも俺は知っている。そんなチートでは目立ちすぎて、「悪人」どもにも狙われやすいのだ。

 だからこそ俺は厄介ごとに巻き込まれないよう、目立たないモブ平民になった。そして、まんまとそのおかげで大司教グレゴールに見つからずに済んだわけだ。


「大司教は同じようなことを繰り返していたんじゃないかしら。『名喰い』のような大きな効果のスキルは一生のうちに何度も使えるようなものではないとは思うけれど、それでも都合の悪いことがあったら、スキルを使ったはずよ。もしかしたら他にも名前を取り返した人たちがいるかもしれない。

 いずれにしても、私の知る限り、『名喰い』を解除して、皆に記憶を戻してもらうには、スキル使用者を殺すしかなかった……」

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