第十八話 名もなき断罪4
貴族令嬢に刺された大司教グレゴールは、膝からゆっくりと崩れ落ち、断罪台の上で倒れた。
観衆があまりの衝撃に静まりかえった。
「なぜだ……わしは負けたのか……? わしが夢見た……永遠の幸福と平和の世界は……訪れないのか……?」
グレゴールが息も絶え絶えに呟いた。
「あなたは、あなたが『悪人』だと見抜ける人物がいたのに気づかなかったのね。それは『剣姫』でも『聖女』でもない。あなたがその人を見つけられず、あなたがその人に見つけられてしまったことが、あなたの敗因」
刺した貴族令嬢が、息絶えようとするグレゴールに告げた。
「くそぉぉぉ!」
グレゴールの体が痙攣し、そして動きが止まった。
……
…………
「ああああああ!!!」
俺は絶叫した。
それとともに、先ほどまで「偽りの聖女」の断罪を支持していたはずの観衆が、大司教の死に大きな歓声を上げた。
俺は観衆をかき分け、断罪台へ急ぐ。——謝らなければ……。とにかく、あの人に謝らないと。
観衆の喝采を浴びながらも、あの人は断罪台を降り、こちらに向かってくる。
その姿を見て、俺の目から涙が溢れてきた。
観衆に押され、なかなか思うように進めない。だが俺は必死に進む。
あの人の姿が近づいてくる。そして俺は手を伸ばす。
その人が俺の手を掴む。痛いほど強く。
「ユウマ!」
その人は俺の名前を呼ぶ。
「私の名前がわかる……?」
その人は俺に尋ねる。
その人の名前は——
「クローデリア様」




