第十五話 名もなき断罪1
俺は何だかスッキリして、とても目覚めの良い朝を迎えた。
しかし、そんな気分爽快なところに、王城からの使いが来やがった。
「ジークフリート様がユウマ様に登城せよ、とのことです」
モブ平民に「登城」って何なんだよ。なんでこんな気分の良い日にわざわざジークフリートに会いに行かないといけないんだ。
「断罪結社」の仕事じゃなくて、断罪見物なら喜んで行くのに。
爽快な気分が一瞬で憂鬱な気分に変わりながらも、「宰相命令」と言われると俺の魂に刷り込まれた社畜精神が勝手に体を動かし、外出の準備を始めるのだった。
「ユウマ、断罪のニュースがあったらすぐ教えてくれよ」
出がけに断罪見物趣味の父が声をかけてきた。良い気なもんだ。
王城に向けて長い道のりを歩いていると、何か後ろから尾けられている気配がした。
こんなモブ平民でも宰相直轄の秘密結社の工作員(?)なのだ。そんな俺を尾けるとは良い度胸だぜ。
俺は素早く後ろを振り返った。
すると俺の真後ろにぴったりくっついている美しい貴族令嬢っぽい人がいた。顔近っ!
「……びっくりした。……ど、どなたですか? こんなモブ平民に何かご用ですか?」
そんなにぴったりくっついたら尾行にもなってないだろう……。
「あの……ごめんなさい」
そう言ってその貴族令嬢っぽい女性は突然涙を流し始めた。
「え? え? こちらこそごめんなさい」
なんかよくわからんが謝っておこう。
……しかし、貴族女性を泣かせる平民なんて死罪じゃね?
俺は慌てて周りを見回すが、誰も気にしていないようだ。
俺はその女性を刺激しないようにゆっくりと離れていき、駆け出した。
いやー、怖すぎる。
一気に王城まで走ったが、さすがに息が上がってしまった。
「ほう、走ってやってくるとは感心だな。よほど任務に飢えているようでけっこう」
ジークフリートは王城前広場まで出てきて俺を迎え入れた。勘違いは正さねばなるまい。
「違うんですよ。変な貴族令嬢っぽい女性に絡まれて走って逃げてきたんです」
ジークフリートが顔を顰める。
「なぜ貴族女性がユウマのような平民に絡むのだ? おまえ、何をしでかしたのだ? 宰相直轄の秘密結社に所属しているという自覚を……」
「何もしていないのに尾行されていたんです! たぶん秘密結社を狙う誰かが、俺の命を狙っているのですよ。なんだったら護衛をつけてください」
そもそも宰相直轄の秘密結社のメンバーが非力なモブ平民一人ってのがおかしいだろ。
「何だと? ユウマ、おまえ秘密結社の秘密を誰かに漏らしたんじゃないだろうな?」
何を言っても叱るポイントを探すタイプの上司だな、こいつ。
「漏らすわけないじゃないですか。自慢じゃないですけど、ろくに友達もいないんですよ、俺。断罪だけが趣味の寂しい男なんです。……そうだ、次の断罪の予定はどうなっているんです」
こういうときは相手がより興味を示す話題にすり替えるしかない。
「そうだ! 説教したくなって本題を忘れるところだったではないか」
やはり「説教したい」モードになっていたか。危ないところだったぜ。
「どうも聖女を騙る偽物が現れたようなのだ」
「偽聖女?」
「そうだ。聖教会が認定もしていないのに聖女のような活動をしている者がいるらしくてな。私のところに調査の依頼が来たのだ」
「別にそんなのやらせておけばいいじゃないですか。何の害があるんです? 聖女の『ような』活動って、もし治癒とかしてくれるならむしろ王国にとっても有益じゃないですか」
「……ユウマ、『聖女』だと偽ることがどれだけ重大な罪なのかわかっていないのか? 聖女はそもそも聖教会が厳密な祝福適性試験を行って人格適性も見て、徹底的に精査した上で正式に承認されねばならん。なぜなら聖女は王国にとって重大な責任を……」
「そうでした、聖女を騙ることは重罪だ! そうだ、断罪だ! やったー」
「……まあ、わかっているならよい」
よし。説教モードに戻りそうなところをうまくブロックした。
「では、さっそく『断罪結社』出動だ。ユウマ、とりあえず王都中を歩き回って『偽聖女』の罪状で石を投げてきてくれ」
「?」
ジークフリートの指示の意図がよくわからず、固まってしまった。
「うん? 返事は?」
「あの……王都って広いですよね?」
「広いな。それがどうかしたか?」
「王都中を歩き回るなんてことができると思います?」
「私は無理だな。ステータス的に知力に全振りだから」
「俺はそもそもステータスの基礎値が低いですよ」
「気合いでステータスを覆すのだ」
ジークフリートが冷たく言い放った。
こんなくだり、前にもあったような?




