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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第十八章 窓の向こうの真実  

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開かれた本、その裏で動き出すもの   

ぱたり、と分厚い一冊が閉じられた。


 管理室の天井に並ぶランプが、古紙の色を淡く照らす。


 しばらく黙っていたリュカは、深呼吸をひとつ置いてから隣のティオへ視線を向けた。


「……ティオ。覚えてるか? “感情屋”…あの不可思議な店のこと」


 ティオは、棚から降ろしかけていた記録簿の手を止める。


「もちろん覚えてるよ。忘れようにも、忘れられない」


 ティオはゆっくり椅子に腰をおろし、薄く笑った。

 けれどその笑みは、思い出のせいでひどく重たかった。


「あのとき──あの父親が店の名を口にした瞬間、明らかに不可思議な行動を取った。

そして……亡くなった」


 ティオは声を潜めるように言った。


 その場の空気がわずかに沈む。リュカは聞き返そうとしたが、言葉が喉の奥で止まる。


「ここ最近、妙なんだ」

 

ティオが続ける。


「メモリーズブックの棚にいるとき、たまにあの店のことを思い出す……何か、動いているんじゃないかって思うんだ」


「嫌な予感……ってやつか」


「うん。

 しかも、ただの不穏じゃない。

 “誰かが、どこかで、確実に手を伸ばしている”……そんな気配がする」

 

ランプがひとつ、小さく瞬いた。

 管理室の静寂の中で、その光の揺らぎがまるで警告のように思えた。


 ティオは記録簿を閉じ、ゆっくりと立ち上がる。


「気のせいならいいんだけどね。でも……そうじゃない気がするんだ、リュカ」


 リュカはしばらく沈黙した。


 ただ机に置かれた本──〈陽だまりの庭で、恋をした〉を見つめる。


「……分かった。

 注意しておこう。何かが動き出してるなら、俺たちが何とかしないといけない」


 管理室の時計が、静かに時を刻む。


 それは、これから先の物語が大きく揺らぎ始める予兆のようでもあった。


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