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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第十七章 陽だまりの庭で、恋をした

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54話


「……えっ?」


思わず息を呑んだ。


見たこともないほど滑らかな石床。

淡い青色の光を放つ案内板。

空気を震わせるような低い唸り音。


そして──


銀色の巨大な“何か”が、ホームの奥に静かに停まっていた。


「な、何……あれ……?」


エレナの声はかすれていた。


城にある馬車とも違う。

魔導騎士団の装甲車とも違う。

そもそも“車輪”が見えない。


巨大な鉄の塊が、まるで生き物のようにぼんやりと光を反射していた。


「これが……列車だよ」


隣でリュカが微笑む。


「れ、れっ……しゃ?」


エレナは聞き慣れない響きをそのまま口にする。


一歩近づくたびに、胸の鼓動が速くなる。

鉄の壁に触れてはいないのに、圧倒的な存在感に体が震えた。


「ちょ、ちょっと待って……! これは……馬もいないし……車輪もないし、どうやって動くの……?」


「んー、説明してもたぶん分かんないと思う」


リュカは肩をすくめる。


「ていうか……動くの?」


「うん。すごく速いよ」


「すごく速い……? こんな鉄の塊が……?」


エレナは両手を胸の前でぎゅっと握りしめた。

中世の常識で理解しようとしても、すべてが噛み合わない。


遠く、車掌のティオが私たちを見ていた。彼の制服の紋章が月光のように瞬き、切符を握る指先が確かな意思を示している。


ここが、始まりのホーム──時を裂く列車の、最初の足場だった。


列車の側面が反射する光に、エレナの瞳が揺れる。


「ま……待って、本当にこれ、乗るの……?」


「そうだよ。エレナの時間を戻すためにね」


リュカの言葉に、エレナはさらに混乱する。


言葉がうまく出てこない。

世界があまりに違いすぎる。


けれど──

列車の扉が軽やかな音とともに開いた瞬間、


エレナはもう二度と戻れない境界を越えてしまったのだと、

直感だけははっきり理解していた。

遠く、車掌のティオが私たちを見ていた。彼の制服の時の紋章が月光のように瞬いていた。


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