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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第二章 取り戻したい時間がホームにあった

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時空電鉄サイド ──戻る者、見送る者

時空電鉄本部。巨大な時計塔の中心にある観測室では、リュカとティオが並んで巨大パネルを見上げていた。

ホログラムに浮かび上がる悠真の人生軌跡は、ゆっくりと折れ線を描き、赤色から青色へと色調が変わっていく。


「……終了だね。記憶の回収が始まる」


ティオが呟くと、透明なキューブがパネル下から浮上し、中に光の粒が寄せ集まって輝きを放った。

それは悠真が一週間で積み重ねた記憶や過去1年分の記憶が形になったものだった。


「よくやったよ彼は。最悪の未来は回避された」 ティオがそう言うと、リュカは無表情のまま頷いた。


「完全な解決ではないが――生きるということは、そういうものだ」


「……君ってさ、感情ないようで、案外いちばん情が深いよね」


リュカは苦笑すらせず、淡々と歩き出した。


「次の乗客を迎えに行く。案件はまだ残っている」


観測室の扉が閉まる。

ティオはしばらく棚を見つめ、先ほど収めた《悠真》の背表紙にそっと指先を触れた。


「忘れても……幸せでいてね」


祈るような声は、誰にも聞こえない。無感情に聞こえる言葉の裏に、わずかな優しさが滲んでいた。

ティオは回収された記憶のキューブを、ゆっくりと棚へ収める。

淡く光る背表紙には《悠真》という名が刻まれた。


「思うんだ。みんなが “記憶を失っても後悔しない” なんて、無茶な条件じゃない?時を戻せるなら、覚えていた方がいいに決まってるのにさ」


ティオの声は、どこか痛みに似た寂しさを含んでいた。

リュカは腕を組んだまま目を閉じる。


「記憶が残れば、人は永遠に過去に縛られる。

 後悔を抱えたままでは、生き直しにはならない」


静かに、しかし強く。


「大切なのは “思い出すこと” ではなく、“変われたこと” だ。

 その結果が未来を作る」


ティオは言い返さず、ほんの少しだけ笑った。


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