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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第十七章 陽だまりの庭で、恋をした

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52話

夜明け前、アルトは裏門から出て、帰宅しようとしていたところだった。暗い人影が一つ、城壁の陰から現れ、静かに弓のかごから長い棒を取り出した。


それは木製の弓ではなく、金属の箱を構える者。クロスボウだ。一閃、放たれる一発は、近代に近い冷徹さを持っていた。アルトが気づく間もなく、矢は胸を貫いた。痛みは一瞬で、そして世界は音を失った。


噴水の水はいつも通り流れていた。朝の柔らかな光は何も忘れない。だがアルトの体は、庭の芝に倒れていた。エレナが悲鳴を上げ、白い手が空へ伸びる。彼女の膝は芝に沈み、泣き叫ぶ声は城中に広がった。だがその悲鳴が届く先には、冷たい契約と金の匂いがあった。


後に知ることになった。闇の手配人の帳簿。ロドリクの名。金貨のやり取り。彼女が突きつけられた現実は、明瞭すぎて夜の中で光った。


愛した相手を奪ったのが、約束を取り消さぬと誓った男の手によるものと知ったとき、エレナの世界は崩壊した。


だが崩れたのはそれだけではない。彼女の胸に残ったのは、自分自身が、身分の差を嘆き、その弱さの中で誰かを愛したという事実への深い後悔だった。対等ではない関係を夢見たことの驕り。彼女は夜ごとにアルトの袖の匂いを探した。


彼がしたささやかな贈り物の跡を手で辿りながら、自分が彼に何を与え、何を奪ってしまったのかを思い知る。


ロドリクは法の外で裁かれることはなかった。力ある家柄は影を動かし、噂を消し、汚れた金を隠す術を知っていた。エレナの証言は迫力を欠き、彼女の涙は冷酷な計算の前に押しつぶされた。


彼女が最も恐れていたのは、アルトの死後に残るこの「静かな正当化」だった──誰もが彼女の恋など小さな戯れと片付け、真犯人は笑うように日常へと戻るだろう。


夜、噴水の傍らで、エレナは一人、ぬれた花びらを掌の間で揉みしだいた。泥のついた手が教えてくれた誠実さが、今やアルトへの罪悪感に変わる。その罪は金で消えるものではなかった。彼女は声にならない謝罪を、もういないアルトに向かって何度も繰り返す。


「ごめんなさい、アルト。私が――初めてあったとき押し返していれば、」


言葉は途切れ、夜風がそれを運んだ。石の噴水は何も答えない。ただ水を流し続ける。水はすべてを洗い流すだろうか。彼女の胸に残ったのは、冷たい後悔と、失われた愛の余燼だけだった


終わりに、エレナは一つの決意を抱いた。罪を消すことはできない。だが名前を声に出し、忘れないことはできる。アルトという一人の男の存在を、彼女はこれからも胸のうちで守り続けるだろう。それがどれほど微かな救いであっても、残されたものの唯一の誠実さだと知っているから。


庭は夜の静寂を取り戻した。だがそこにはもう、二度と戻らない足跡だけが、朝露に光って残っていた

庭の花びらが風に舞っている。あの日と同じ白い花だ。私はその匂いに押し潰されそうになりながら、告げられたことを反芻した――「森での事故」それが、公式の説明だった。


最初は誰もが「事故」と言った。役人たちの口調も、家族の言葉も、みんな丁寧で、整然としていた。けれど葬儀の後、城の片隅で囁かれる言葉が増える。噂はいつも、真実の輪郭をぼんやりと照らす。私はそれを、ただの風だと無視したかった。無理にでも、あの優しい笑顔だけを抱いていたかった。


でも、真実は粘り強く這い寄る。

最初の小さな亀裂は、下働きの女中からの震える告白だった。


彼女は顔を隠して、震える声で言った。


「あの日、夜更けに旦那様がこっそり外へ出て行きました。馬小屋の方へ、懐に封筒を握りしめて」


それだけでも胸がざわついた。けれど言葉だけでは人は裁けない。私はまた、耳を閉ざそうとした。



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