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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第十七章 陽だまりの庭で、恋をした

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管理室での会話  

薄い雨の匂いが残る静かな部屋。


メモリーズブックの管理室――壁一面に古い棚が並び、背表紙の色褪せた本が規則正しく並んでいる。室内には紙とインクの、少し甘いような落ち着いた匂いが漂っていた。


机の中央には大量の書類が積まれ、リュカとティオが黙々と仕分けをしていた。

パラ、パラ……

書類をめくる音だけが、静かな空間に穏やかに響く。


「……一年分の記憶、また誰かのが消えかけてるな」


リュカが淡々とした口調で言い、黄色く変色した報告書をめくる。

ティオは頷きながら、別の紙束を整えた。


「消える前にここの保管分を整理しないと。列車に乗る人数も、ここのところ増え続けてる」


その言い方は軽いのに、目はどこか沈んでいる。

ふと、リュカが棚の隅へ視線を向け、首をかしげた。


「……あれ? こんな本、あったか?」


ティオも顔を向ける。


棚の一番下――誰も触れないような古い隙間に、一冊だけ色の異なる本があった。

柔らかなクリーム色の装丁。指先で触れた瞬間、かすかに温かい。


リュカがそっと取り出し、表紙に刻まれた文字を読む。


「『陽だまりの庭で、恋をした』……?」


「題名からして、ずいぶん古いね」


ティオが近づき、覗き込む。


本は軽く、まるで誰かの記憶が眠ったままのようだった。

ページを開くと、柔らかな黄金色の光がふわりとこぼれた。

絵画のような一枚の情景が浮かび上がった。


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