それは、偶然と呼ばれた運命
時空鉄道の待合室は、いつもと変わらず静かだった。
ホームの先には、もう誰の姿もない。
列車が走り去ったあとの、わずかな余熱だけが残っている。
ティオは、線路の方を見つめたまま、ぽつりと言った。
「……うまくいったね」
リュカは、隣で腕を組み、ゆっくりとうなずく。
「ああ。あの選択は、間違いではなかった」
しばらく、沈黙。
ティオは、少し首をかしげた。
「ねぇ、リュカ」
「なんだい」
「蒼真とお千代、あの二人が出会ったのって……ほんとに偶然だったのかな」
リュカは、すぐには答えなかった。
ホームの天井を見上げ、静かに息を吐く。
「偶然、という言葉は便利だ」
「逃げ道、ってこと?」
ティオが小さく笑う。
「そうだね」
リュカも、わずかに微笑んだ。
「だが、時を越えてもなお、
同じ魂が引き寄せられることがある」
「それって……」
ティオは、言葉を探す。
「運命、ってやつ?」
リュカは、否定もしなかった。
「そう呼ぶ者もいる」
少し間を置いて、続ける。
「ただ一つ言えるのは、あの二人は“選び続けた”ということだ」
「逃げないって?」
「ああ。怖くても、手を伸ばすことを選んだ」
ティオは、思い出すように目を伏せた。
「……だから、今度は同じ時代で、ちゃんと出会えたのかもね」
リュカは、ホームの奥を見つめた。
「そうだといい」
列車の到着を告げる、かすかな音が鳴る。
ティオは、いつもの調子で背伸びをした。
「さーて。次のお客様は誰かな」
リュカは、静かに答える。
「必要な者の番だ」
二人は、並んでホームに立つ。
時空鉄道は、今日もまた、
誰かの“やり直し”を待っている。
——それが、偶然か。
それとも、運命か。
答えは、いつも乗客が決める。




