表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第八章 記憶の代わりに君を

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/62

22話

震える声がすぐ目の前から聞こえ、そこに、確かに玲奈が立っていた。

涙をためながら、信じられないものを見たような表情で。


「れ、玲奈……!」


 生きている。温かい。こんな当たり前のことが胸に刺さる。抱きしめ返す玲奈の体から、彼女がどれほど壊れそうだったかが伝わってきた。斗真の目には、過去数日の後悔と、助けられなかった苦しみが一気に集まる


 しばらく言葉にならない時間が流れ、ようやく玲奈が小さく息をついた。


「……斗真、どうして……」


 その声は震えていて、今にも泣き出しそうで。


 斗真は肩をそっと押し離し、彼女の顔を見つめた。


「わからない。君に会いたい……そう強く思ったときにはここにいたんだ……」


斗真と玲奈が抱き合い、ようやく落ち着いたその瞬間だった。玲奈の肩が小さく震えはじめる。


「玲奈?」


 そっと顔をのぞき込むと、玲奈は怯えたように視線を揺らしながら、唇を震わせてつぶやいた。


「……ねぇ、斗真。わたし……わからないの……」


「何が?」


 玲奈は胸の前で握った手をぎゅっと強くし、言葉を絞り出す。


「わたし……あの夜……家にいて……。お母さんがね、倒れてて……動かなくて……」


 彼女の声は震え、記憶を手探りでたどっているようだった。


「それで……家が、燃えて……煙がいっぱいで……苦しくて……」


「玲奈……」


 斗真の胸が痛む。玲奈は必死に続けた。


「わたし……確か……何かが落ちてきて……頭に当たって……倒れて……。その……あとは……」


 その先を思い出そうとするたびに、玲奈の眉がぎゅっと寄り、呼吸が乱れる。


「……なんで? なんでわたし、生きてるの……? ここ……どこなの……?」


 玲奈の両目から涙が零れ、斗真の胸元に落ちた。

斗真はそっと彼女の肩を抱き寄せながら、はっきりと答えられない自分に気づく。


自分も――何が起きてどうしてここに来たのか、完全には理解できていなかった。


しばらくして、背後から静かな声が響いた。黒燕尾の青年――リュカ・ヴァンレオンが、一歩離れて立っている。彼は二人を見つめると、少しだけ首をかしげた。


「知り合いでしたか」


「あなたは……?」


 斗真が身構える。

リュカは軽く胸に手を当て、礼をした。


「時空電鉄・案内係のリュカだ」


おだやかな声で言い、ゆっくり二人に歩み寄る。

玲奈は涙に濡れたまま、震える声で問いかける。


「ここは……いったい、どこなの……? わたし……どうなったの……?」


リュカは一瞬だけ目を伏せ、そして優しく言った。


「ここは――時空電鉄の待合室。

“もう一度だけ選択できる場所”です」   


玲奈の肩がぴくりと震え、斗真の手が強く握られる。


「ま、待って……亡くなった? わ、わたし……死んだの……?」


「落ち着いてください、玲奈さん。あなたは、確かにあの火災で……命を落としました」


 玲奈の顔色がさっと青ざめ、斗真が息を呑む。


「そんな……」


「しかし――完全に消えてしまったわけではありません」


 リュカの声はあくまでも静かで、優しい。


「あなたの“想い”がこの時空に引き寄せられ、そして斗真さん――

あなたが強く願った。その願いが、道を開いたのです」


 斗真の胸が熱くなる。

自分が叫んだ“戻りたい、助けたい”という思い。その意味が今、形になっている。


「では……僕と玲奈は、どうすれば……」


 斗真の声は震えていた。

リュカは二人をまっすぐ見つめ、ゆっくりと言葉を続ける。


「お二人には、ひとつの選択肢が与えられます。

――過去へ戻ることです」


 玲奈が息を呑む。


「戻れる……? 本当に……?」


「はい。ただし――条件があります」


 リュカの瞳に、わずかな哀しみが宿る。


「戻った日から“一週間後”、お二人は 過去一年分の記憶 をすべて失います」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ