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時間を巻き戻せる切符――代償は、君との一年分の記憶でした    作者: まなと
第七章 最後の父として

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記憶の行き先   

天国への扉がゆっくりと閉まりかけたその瞬間、

リュカがふと立ち止まり、隆司も振り返った。


「……ひとつだけ、特別に処理を変更してもいいんじゃない?」


リュカは驚いたように眉を上げた。


「処理? 記憶のことか?」


ティオは無表情のまま頷いた。

だがその瞳は、ほんのわずかに優しさを湛えていた。


「本来──時空介入をおこなった者は、元の時間軸の過去1年分の記憶をすべて失い、

 ただ“使命を果たした”という満足感だけが心に残るけど、、、」


「……わかっている。娘が笑ってくれた。それで十分だ」

ティオは微笑んだが、胸の奥にかすかな寂しさが滲んでいた。

ティオがすっと前に立つ。


「ねぇリュカ。意地悪やめなよ。あの人見たろ?

 娘さんの幸せのためにさ、自分の人生だって命だって投げ出すいいお父さんだったでしょ」


「……我々の規則は厳格だ」


「でも、あの父親は“過去を変えたかった”のではなくなく、“娘を守りたかった”だけだよ。

 そんな人から、思い出まで奪うなんてさ……あんまりだろ?」


沈黙が落ちた。


リュカは長く、ゆっくりと息を吐き、

『時空電鉄本規約』の金属製プレートに触れる。


そこにはこう刻まれていた。


 ──愛による時空介入は、宇宙の秩序を乱すが、

   愛による救いは、宇宙を調和させる記憶の行く先2   

リュカは目を閉じた。


「……我々の仕事は“歴史の守護”だが、

 時に“愛の守護”がそれを凌駕する場合がある」


ティオがにっと笑った。


「きたきた、リュカの冷たく見えて良いところ」


そしてリュカはティオの胸にそっと触れる。

まるでそこに鍵穴があるかのように。


「記憶は、残しておこう。

 涙も、笑顔も、娘の“ありがとう”も、全部だ」


隆司の胸の中には、娘の手の温度、笑顔、声、思い出、

そして最後の「お父さん、ありがとう」が永遠に刻まれたままだった。


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