魔王、その命の終焉。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。 魔王消滅の真実。
ある所に魔王がいた。
魔王友の会に所属する、一介の魔王であった彼は、最近とある妖精の国で爆発的な人気を誇っている癒し系ペットを通販で入手した。
魔王は極悪非道百戦錬磨の部下たちをドン引きさせる程のバカ親っぷりを発揮し、人間たちどころではなく、魔族まで滅ぼしそうな禍々しい有様であった。
「お~きゃわゆいきゃわゆい、いいこでちゅね~!!」
「…魔王さま、キモイです」
「お腹ちゅいたんでちゅか?
じゃあご飯にちまちょうねぇ~!」
「キモ王さま、魔人の話を聞いて下さい」
「おい、今、キモ王っつった?」
「何でそんな時だけ反応するんですか
それよりもいい加減仕事して下さい、ほんと駄目魔王なんですから
それからそのネズミ、小さいんですからケースから出してるとどっか行っちゃいますよ」
「ただのネズミじゃない!
オレの最愛のバルチスタンコミミトビネズミ、フランソワーズちゃんだ!!」
「ああそうですか、それはよかったですね」
「お前、オレのこと嫌いだろ? なぁ嫌いだろ?」
「嫌いです」
「くっそ、バッカヤロォォォオオオオ!
お前、オレだってお前なんか嫌いだよザマーミロバーカバーカ!!」
「バカはあんたですよ」
「がふぅ!」
「わざわざスポットライトを浴びてまで精神的ダメージを表現してる時に申し訳ないですが
貴方の愛しのフランソワーズちゃんがいつのまにか消えてますよ」
「何ィィィイイイイイイッッ?!」
途端、真っ青になった魔王は、私室兼執務室を火事場泥棒の如く引っ掻き回した。
「片付けはご自分でなさって下さいね」
「わかってるよ煩いよお前くそフランソワーズゥゥゥウウウウウウ!!!
パパはここでちゅよォォオオオ!!
出てきておくれぇぇえええええええええ!」
「あ、いた」
「え?!、どこどこどこどこどこどこどこだゴラァァアアアアアア!!!」
「そこですよ、ほら」
指差しで示されたそこには、家捜しに怯えた魔王愛しのフランソワーズがいた。
魔王はまるで生き別れの恋人に再び巡り逢えたかのように狂喜し、世界を滅ぼしそうな勢いでフランソワーズに駆け寄った。
しかし、当然、そんな勢いで駆け寄ればフランソワーズの怯えに拍車が掛かるだけであった。
「あ!、どこ行くんだフランソワーズ!
フランソワーズゥゥゥウウウウウウウウウッッ!!」
「あ!、このバカ魔王さま、足元を、」
ごん。
「ギャァァァアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!」
「ば、ちょ、このキモ王!
だからこの前言ったじゃないですかっ
危ないからコーナーガード・クッション着けましょうって!!」
フランソワーズしか眼に入っていなかった魔王は、箪笥の角に小指をぶつけた衝撃で滅びた。
「……派遣に新しい魔王さまを紹介してもらおう」
冒頭、【癒し系】と一発変換しようとしたら【嫌死刑】と出た…orz
いや、まじで……
嫌いにならないで?!
嫌いにならないでね?!
因みにフランソワーズは某巨大妖精の国からの通販。