表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

隣国へ

次の日

「おはよう!ジェシカ!婚約を結ぶ前で良かったね!手続き面倒だからさ!」


ムシ。



すれ違ったお母様に、

「あの伯爵家、潰したくなったら声をかけてちょうだい」


返事をする前にいなくなった



学園から帰ってきた妹は、

「やっぱり岩みたいな人じゃなくて、スマートで金髪碧眼よね~」


通りすぎて行った。



その次の日には、お詫びとして伯爵領の名産品が手紙と共に送られてきた。


中身は、ジェームス様のご両親からの謝罪。

本人は、ローレンス殿下にネチネチ怒られ、辺境に飛ばされたらしい。


ヒューバードの護衛を任されていた騎士団は何も言えなかったらしい。


ヒューバードって重要人物なの?

そうは見えなかったけど。


まぁ、いいか。兄の手伝いの為、兄の執務室へ入る。


「体は大丈夫か?」


「ええ」


「そうか」


2人で黙々と事務処理を進めて行く。

ひと段落して、執事が持ってきてくれた茶に手を伸ばす。


「隣国に行く話、進めていいか?」


「え? いいの?」


「ああ、ジェームス殿の事もあったしな。噂は早いからな。殿下も少しやりすぎだ、お前の事を好いてるにしてもな」


「まさかそんな訳ないでしょ」


「そうか?」


「そうよ!」


私が学園に入学して、本当は1日で卒業したかったけど、2日間延ばしたのはローレンス殿下。


テストの結果を不審に思われて、もう1度テストを殿下の前で行い、殿下が採点した。不正がないことがわかると、せめて3年になって同級生になろうと変な事を言われたわね。


当時から翻訳の仕事はしていたから、そっちでお金を貯めたい。と言えば、なぜ王宮で文官になろうとしないのだ?

表情が変わらないからだと伝えれば、どうにか笑わせようと必死だったわね。


あの時はムダな時間にイライラして、スンとした顔をしてたけど、今思えば、必死な殿下は面白かったかも。


結局、殿下から翻訳の仕事の依頼がきて、報酬を聞いた時の私の顔が驚いた表情になり、金かよ! と笑ってたわね。


そのくらいの付き合いよ?

嫌われてはいないだろうが、好かれてるなんてとんでもないわ。


「隣国へ行く時には、ヒューバード殿も一緒に行く」


「え」


「ヒューバード殿も、お前が気に入ったようだ」


「げ」


「叔母様には、手紙を書いて送ってある」


「はい」







隣国に行く日には、殿下も見送りに来た。


「仕事はあっちでも、ちゃんとやってくれよ」


やっぱりね! 仕事が大事なのよ! この人は。

兄が変なこと言うから意識しちゃうじゃない!と思ったが、スンとした表情でいられた。


「ジェシカぁ!ずるいよ、君だけ行くなんて。僕も連れてってよ!!」


こっちの方が可愛げがあるわ。


娘に縋り付き泣く父を、兄が引き剥がし、


「気をつけてな」


兄の目を見て耳をさわる。

幼い頃は、ほとんどこちらのサインは使わなかったけど、最近は大丈夫の方が多くなった。


「ふっ」 兄が少し笑った気がした。


「行ってきます」







馬車の中のヒューバードはうるさかった。


小さな商会をやっているらしい。

それで母国語だけで大丈夫なの?他の言語は習得しているの?

でも隣国の言葉は、北から西にかけて接地してる国は同じ言語だから大丈夫なのか?

違う国に買い付けに行く事だってあるでしょうに。


私には色々聞いてくるくせに、自分の事はあまり話さない、ヒューバードにイラっとした。


でも父が書いた本を売りたいと言ったら、その話に乗ってくれた。


ヒューバードは長いからヒューと呼んでと言われ、了承したが、私の名前をジェシーと呼ぼうとしたのは断った。

別に私の名前は長くない。


ヒューの商会の場所から叔母様の家は離れてなかった。

歩いても行けそうな距離なので、父の本が出来上がったら、商会に持って行くと伝え、別れた。






「まあ、ジェシカ!久しぶりね。大きくなったわね!」

抱きしめてくれる叔母様


「ようこそ、ジェシカ。自分の家だと思ってゆっくりしてくれ」

おじ様とも軽くハグをする


叔母様は、1度目の結婚で自国の侯爵家に嫁いだが、子ができず離縁。次を探すも、いい話がない所をおじ様が手を差しのべてくれたそうだ。


おじ様は、奥様がいたがご病気で儚くなられた。息子を育て成人し、爵位も譲って、旅行をしていた所で、叔母様に出会い、話を聞いて、隣国に連れて行ってくれた人らしい。


2人の間に子はいないがとても仲のいい夫婦


兄と私が、祖父母に育てられたと知った叔母様は、涙を流して謝ってくれた。


「気がつけなくてごめんなさい」


叔母様は何も悪くないと言っても、やはり祖父母の苛烈さを知っているから謝らずにはいられないそうだ。


姪っ子思いの優しい、大好きな叔母だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ