放置された
我が家に来たジェームス・バトン様。
茶色い短髪に茶目で、がっしりとした体型のお方。
兄が窓から心配そうに見てるが、兄の目を見て、耳をさわりサインを送る。
「初めまして。ジェシカ嬢とお呼びしても?」
「はい」
「私のことはジェームスと」
「・・ジェームス様」
「うん、ありがとう。突然で驚いたかな?私は、弟がいてね。君の事は聞いていたんだ。3日で卒業した才女がいたと。」
「・・・」
「それにね、この前、姉君の結婚パーティーに私も参加してたんだ。その時に君を見つけた」
見つけたって・・・特別何もしてなかった気がするのだけど。
「兄と仲良くパーティー会場に来た君を見て、私が隣に立ちたいと思ってね。あー、まー、つまり、その・・・ひと目惚れだ」
頬をかき、顔を赤らめながら話すジェームス様。
悪い人ではなさそうね。
「ふふ、ありがとうございます」
「私は頭を使うより、体を使う方が合っているから、騎士団に所属しているが、いずれは伯爵家を継ぐ身だ。正直に言うと、その時に君が側にいてくれると助かると思ってる。」
お茶会やパーティーなんかより、仕事をしてる方がいいわ。
「私も、たまに兄を手伝っております。仕事は苦ではありませんので大丈夫です」
「良かった」
ニコっと笑うと、だいぶ雰囲気が変わり、優しい感じになるのだなと思いながら、話を続け、次はカフェに行こうとなった。
今日はこの辺で、と立ち上がったところで、アリアが学園から帰って来たようで、こちらに歩いてきた。
「ただいま、お姉様。 ・・・えっとぉ、そちらの方は?」
はあ、わざとらしい。
「お姉様」、「ただいま」なんて初めて言われたわ。昨日、見合いの事も自分から確認してきたくせに。
調子のいいこと・・・
「おかえりなさい、アリア。こちらはジェームス・バトン様よ。 ジェームス様、この子は妹のアリアです。」
「こんにちは、アリア嬢。今日は君のお姉様に婚約の打診をしにきたんだ」
へぇ、意外にハッキリと言うのね。可愛いアリアを見て、濁すと思ったのだけど。
「まぁ!そうだったのですね。お姉様ったら、うらやましいわ、こんな素敵な方と婚約なんて・・・」
胸の前で手を組み、キラキラした目でジェームス様を見上げるアリア。
「ははっ、何だか照れるね。じゃ、そろそろ行くよ。来週迎えに行く、ジェシカ嬢。」
そして、何故か2人で見送る展開。
私は会釈。
妹は笑顔でブンブン手を振る。
馬車が見えなくなると
「なーんか、イマイチ。やっぱり金髪碧眼よね~」
と屋敷の中へ歩いて行った・・・
なんだったのかしら・・・
翌週、予定通りにジェームス様が来て、エスコートをしてもらい馬車に乗り込む。
「ん?」
「どうかしましたか? ジェームス様」
「あ、いや・・・なんでも・・・」
「?」
馬車の中でも考え事をしている様子。
目的地に着き、馬車から降りるためエスコートをしてもらう。
「はっ!やっぱりそうだよな。何が才女だ!最初はペンダコと思っていたが、君の手は剣ダコだらけじゃないか!危うく騙されるところだった!この話はなかったことにしてくれ、失礼する!」
馬車に乗り込み帰ってしまった。
最初に違和感を感じた時に言ってくれれば、屋敷内だったのに・・・
ここで1人にされてしまったわ!!
そ・ん・な・こ・と・よ・り!
剣ダコだらけ上等よ!
騎士団にいることを誇ってるのなら、お祖母様のメニューを10日でいいから文句言わずにやってみろ!
こっちは10年だそ?
1回でも愚痴ったら、私が半殺しにしてやるわ!
それにペンダコだってあるわよ!
心の中で言いたいことを言い、少しスッキリした。
何か食べると思っていたから、お腹が空いたわ。
行く予定だったカフェとは、反対側のカフェに入ることにした。
紅茶とサンドイッチのセットがくる。
たまごがふわふわで美味しいわ。
もぐもぐ食べて、大満足!
あ、帰りは歩きだから途中お腹が空くかもしれない!
お持ち帰り用でサンドイッチとクッキーを注文する。
待っている間、外に視線を向ける。
私と同じくらいの年の男性かな?
何か困った事になっているみたい。話しかけて助けを求めてる感じかな?でも人は離れて行く。可哀想ね。
でも、頑張りなさい!!
私もピンチなのよ!!
街に着いたとたん放置されたの!!
これから屋敷まで歩いて帰るの!!
人を助けてる場合ではないの!!
だからお互い頑張りましょう!!
相手にエールを送る。
さ、持ち帰りのサンドイッチもできたし、帰りましょ!