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縁談

「やあ、来たね、ジェシカ。座って、座って」


父に呼ばれ執務室に来た。

この人は執務なんてしてないけどね。


「続編を書き上げたんだ。読んでみてよ」


手渡された原稿に目を向ける。

この父はミステリー作家なのだ。

全く売れてないが。


ふむふむ、ふむふむと読み進め、ラストは予想外の人物が犯人!やるわね、お父様、まんまとハメられたわ!


「面白いと思う」


「本当に読むのが速い!僕も速読術を身につけたいな!それに面白いならもっと面白そうにしてよ!口が少し動いただけだよ?」


そんな事を言われても、私の表情はなかなか動かなくなってしまったのだ。


「何度も言うけど、お祖父様とお祖母様のせいね」


「うっ、ごめんよ、あの頃は本当に申し訳なかった!」


「なんであの2人からお父様みたいな方が生まれたのかいつも疑問に思ってるのよねぇ」


「そんなの簡単さ、僕が子供の頃は、あの2人は現役バリバリで忙しかったからね。僕にかまってるヒマはなかったんだよ。引退して、手が空いた所に2人が現れたからね」


あの地獄を味わわなかった、お父様に少し殺意がわく。


「止めてよ!あー怖い!でも立派に育ってうれしいよ。ロデリックに仕事を丸投げしてもキチンとやってくれるし、君も飛び級して学園を卒業しちゃうしさ」


「・・・私、翻訳の仕事で稼ぎはあるから、家を出ようかなと思って。隣国の叔母様の所に行きたい。お父様の本をあっちで売ろうと思ってるの。この国だから受け入れられないのかと思ってるの」


(なんか納得いかないが、ホントに面白いのだ)


「えーっ! 僕の本の事を考えてくれてうれしいよ!僕も行こうかな!この家ではジェシカ以外、僕とはあまり会話してくれないから寂しいし!あぁ、場所を変えたらまたアイデアが浮かびそうっ!妹の所じゃなくて2人で住まない?」


「・・・叔母様にネチネチ言われたくないからでしょ?」


「バレた、 てへっ」


てへっじゃないのよ、てへっじゃ!


「住むお金はどうするの?お兄様はお金を持たせてくれるかしら?」


「は?今、翻訳で稼ぎがあるって言ってたじゃん。僕も本が売れたら、お金を出すよ!」


「・・・ジゴロ? ヒモ? しかもそれが父親なんて最悪すぎるわ!・・・自分でお金を貯めてからにして!」


そう言って部屋に帰ろうとしたら、



「あ゛ーーーーーーーっ!!」



なんなの!? 振り返り父の方を見ると


「僕もお金がないから行けないけど、ジェシカも隣国には行けない・・・本の話で忘れてた。君に縁談がきたんだった、てへっ」


「!!」 


1回ハッ倒していいかな? 

てへてへ言ってる父を・・・


「バトン伯爵家のジェームスくん。明日、ここに来るよ。顔合わせね!・・・ひっ」


視線で殺せるなら今のであの世でしょうね。


ひ弱な坊ちゃん風だけど、怯えるだけなんて、やっぱり訓練はされたのかしら?


「どんな人かしら?学園も3日しか行ってないし、デビュタントもしてないし、情報がないわ」


「僕も知らない、てへっ」


「・・・・」


イラっとして、乱暴にドアをバッタン!!と閉めて部屋に帰った。



はあー。

いつかはそんな事もあるだろうなぁとは思っていたけど、隣国へ行く話で気分が上がってた所で縁談の話は・・・萎える。


ノックがして、兄が来た。


「縁談だって?もうそういうのも全部こっちに回してほしいよ。 父上の叫び声があったからね、手が空いた所で父上に聞いてきた」


「そうね、隣国へ行きたいって話をしてたら、私のお金を使って自分もついてこようとしてたわ。その後、急に縁談の話を思い出してたわね」


「はあ。隣国の話も初耳だが?父上も?ま、離れるなら離縁してもらった方が良いな。母上も外に出すか、実家に返せば、私の縁談もくみやすい」


「お父様はお金を渡せばすぐ出て行きそうよ?」


「お前なら仕事を手伝ってもらってるから給金として渡すが、父上に金は出したくないな・・・」


「ふふ」


「それより、ジェームス殿の話だが。年はお前より3つ上。学園を卒業してからは王都の騎士団に所属している。真面目に働いていて、特に悪い話はない」


「そう、ありがとう」


隣国はムリね・・・




その後、夕食をとっていると母がきた。


(我が家は皆で食べるという習慣がない)


「伯爵家から縁談の話が来たの?」


「はい」


「いいの?伯爵家で?」


「・・・ええ。お姉様は公爵家と縁ができましたし、私はお相手が良いお方なら気にしません」


「そうなの。もし侯爵家や公爵家の人がいいなら言いなさいな」


「わかりました」


食堂から出て行く母。

話しかけてくるなんて久しぶりすぎて、驚いた。


爵位が上になればなるほど、しがらみや義務だらけで私にはムリ。貴族より、儲かっている商会の方がいいわ。


食事を終え、部屋に戻る途中で妹のアリアに会う。


(今日は、やたら家族に会うわね、父かしら?皆会話してくれないんじゃないの?この後シメてこようかしら?)


「ジェシカ、お見合いするの?」


「そうね」


「ふーん」


「あなたは、学園でいい人できた?」


「常にモテモテよ! おやすみ!!」


この子も茶化しにきただけ?

そんなに私に見合いって、似合わないのかしら?


久しぶりにアリアも見たけど・・・

アリアだけは私達の家族の要素がないのよね。

あ、でもふわふわの巻き毛は父かしら?色も私達とは違うのよね・・・


まぁ、いいか。


明日に備えて私も寝ましょ。


おやすみなさい

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― 新着の感想 ―
[一言] ワクワクするような出だしでこの先どのようになるのか楽しみです。
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