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Blue Bird Blazon ~アルスの旅~  作者: 五十鈴 りく
番外編

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2◆調査隊

 ベルノルトによって編まれた調査隊が初めて顔を合わせた時、そのうちの一人に皆がざわついた。


 武力に優れた騎士、怪我や病気に備えた治療師、その他にも観測士、料理人、各々が役割を持っている。その中に一人の囚人がいたのだ。


 グンター・ニコライ。

 ナーエ村の元村長で、コルト・ニコライという少年の父親だ。


 違法植物を栽培した咎で服役中ではあるのだが、情状酌量の余地があり減刑され、異変の前にノルデンから王都へ移された。つまり、ノルデンで暮らし、中の事情に詳しい。それ故に抜擢された。


 もし彼がいてくれたらいいのではないかとラザファムも思ったのだが、ベルノルトも同じ考えだったらしい。

 グンターはノルデンにいた他の囚人たちとは違い、極悪犯ではない。むしろ村長として村をまとめていた話のわかる人物のはずだ。


 実際に彼は模範囚であり、このままで行けば刑期は短く済むだろうとも言われている。


「彼を同行させることは私が決めた。ただし、まだ自由の身ではない。単独行動はさせないこと。故郷であるナーエ村には立ち寄らないことを条件とする」


 ベルノルトは皆にそう説明した。

 もし彼が貢献できたなら、刑期を縮めることができるのかもしれない。簡素ながらに汚れのない平服に着替えたグンターの、疲れた様子の中にも活気が見えた。

 そこでベルノルトは皆を見回し、ラザファムに言った。


「ラザファム、君が調査隊を率いるんだ。頼んだぞ」

「……畏まりました」


 騎士たちはラザファムよりも年長な上に屈強で、ラザファムなど片手で倒されそうなのだが、彼らを率いなくてはならないらしい。ラザファムは人の上に立つということが苦手だ。一人で行きたいとさえ思ってしまう。


 それでも、事態の大きさを思えば仕方がなく、一番事情を知っているラザファムが率いるのは避けられないことである。


「皆、彼を補佐してほしい。皆の帰りを待っている」


 ベルノルトが決めたことならば、誰も反論はできない。それぞれが畏まって返事をするのみだ。


 その中で目立つのが、ラザファムよりも四つ年上になるウーヴェ・ロンメルなる騎士だった。

 長身で筋骨逞しいが、顔立ちは柔和だ。茶色がかった赤毛は短く整えられている。ラザファムはこの男を知っていた。ラザファムの兄であるルーカスと同年だったのだ。


 兄、ルーカスは武を好まない。かといって、ラザファムのように精霊術に傾倒するでもなかった。兄は次期伯爵として父について領地運営を学ぶことにだけ関心を向けている。社交性があるので、向いているのだろう。


 ウーヴェは子爵家の子息だが跡取りではない。兄はそんなウーヴェと別段親しくなるでもなく、反目するでもなかった。ただの顔見知りに留まっていたように思う。

 ベルノルトが彼を選んだのは、彼がそれに相応しい人物であるからだ。その点を疑うつもりはない。


 皆が部屋を出ていった後、ウーヴェは直々に挨拶をしてくれた。


「この度の調査に同行することになった第二騎士隊所属、ウーヴェ・ロンメルです。クルーガー師」


 にこりと笑みを浮かべるウーヴェをラザファムは見上げる。


「ラザファムで結構です。僕もウーヴェ殿と呼ばせて頂きますので」

「左様ですか。では、ラザファム殿」

「どうかご協力のほど、よろしくお願い致します」


 ラザファムが礼を尽くして挨拶すれば、ウーヴェもそれに見合った返答をくれる。


「こちらこそ――。あなたは希少な、それも最年少の精霊術師であるのに驕らない方ですね」

「精霊術師だからこそ、傲慢であってはならないのです」


 傲慢な人間を精霊は嫌うから。

 ナハティガル辺りに言わせると、けちょんけちょんにされるだろう。そう思うと少し可笑しい。


「ああ、そういうものなのですね。さすがと申し上げるしかありません」


 ウーヴェは朗らかに笑った。

 体こそ大きいが、穏やかな人だ。彼となら上手くやれるかもしれない。

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