4 異世界での出会い
気絶した俺を起こしたのは、美味しそうな匂いだった。
鼻を動かしながら気を取り戻した俺は、
(さっきまでの出来事は単なる夢だった! 目を覚ませば普通の生活に戻れている!)
という淡い期待を心の支えとして、恐る恐る目蓋を開き、布団から頭を出す。
しかし、ベッドの周囲に自室はなく、焚火に照らされた深い森が広がっているだけだった。
「・・・え? 焚火?」
気が付くと、ベッドから少し離れた場所でパチパチと音を立てながら焚火が燃え上がっていた。
いや、俺が驚いたのは焚火だけではなく、焚火の向こう側で誰かが料理をしている。
「・・・」
俺は状況が理解できず、口をパクパクと動かす。
すると料理をしていた「誰か」がこちらに視線を向けた。
この時、俺たちは焚火を間に挟んでお互いの顔を見つめあう。
そして、俺は何も言う事が出来なくなった。
焚火の向こうには、褐色肌の美少女が居たのだ。
彼女が着ている服は質素な服であったが、それが逆に少女の美しさを際立たせている。
俺は、そんな美少女を呆然と眺め続けた。
一方で彼女は目覚めた俺を見て驚くわけでもなく、むしろ少し微笑む。
そして作っていた料理を小さな器に移すと、こちらへ歩いてきたのだ。
「え? え? すいませんが、どなたですか?! え? 何? 誰!?」
突然の状況にアワアワと慌てる俺の前に、少女は器とスプーンを置く。
この時、俺はピクピクと動く彼女の異様に長い耳に気が付いた。
「その長い耳は・・・、もしかして君はエ、エ、エ、エルフ!?」
地球とは違う夜空の下、俺は初めて異世界の住人に遭遇したらしい。
そんな驚く俺を尻目に、恐らくはエルフであろう少女はニコニコと微笑みながら、
「こんばんわ」
と顔に似合う可愛らしい声で挨拶をしてくるのだった。