2 地球での日常
自室のベッドに寝転がってスマホをいじっていた時、俺を呼ぶ両親の声が聞こえてきた。
「健~~。夕飯できたわよ~~」
「早く居間においで。今日は焼肉だぞー」
その声を聞いた俺は足早に居間へと急ぐ。
俺が居間の扉を開くと、既にテーブルに置かれたホットプレートでは肉や野菜がジュウジュウと音を立てていた。
「ご飯は大盛りね?」
「もちろん!」
俺の即答に母親は苦笑しながらも、茶碗に山もりのご飯を盛り付けてくれる。
そして目の前に茶碗が置かれた俺は、
「いただきます!!」
の声と共にガツガツと食べ始めた。
「ははは、一杯食べなさい。お前は成長期なんだから」
「こら健! 肉だけじゃなくて野菜も食べなきゃだめよ!」
そんな母親の声も聞かず、俺は焼肉を堪能し続ける。
そして食後にデザート代わりのアイスを食べ、入浴を楽しんだ後、自室の明かりを落とすとベッドに潜り込んだ。
だが、直ぐに眠るわけもない。
俺はスマホを起動すると動画サイトを眺め、面白そうなアプリをインストールし、ゲームをし、友人と会話を楽しみ、睡魔が襲い来るまで遊び続けたのだ。
そして時計が午前1時を示す頃、次第に重くなる目蓋に耐えながら、俺は明日の予定を考えていた。
(明日は・・・、日曜日だし・・・、何をしようか・・・。
そうだ・・・、確か面白い映画をやっているんだっけ・・・。
・・・誰か・・・誘って・・・、一緒に・・・見に行こうか・・・)
そんな楽し気な予定を考えながら、俺は目蓋を閉じる。
この時の俺は、今日のような「普通の生活」がずっと続くと妄信していた。
しかし、そうはならなかった。
その晩、「普通の生活」は終わり、俺は「普通じゃない生活」を地球に帰る日まで送り続けることになるのだった。