第四話 艦隊決戦
―――ニューカレドニア―――
「何ッ!?敵コンゴウ級は沈まなかっただとッ!!」
ニューカレドニア島のヌーメアにあるアメリカ海軍南太平洋艦隊司令部で南太平洋艦隊司令長官のウィリアム・F・ハルゼー中将が激怒していた。
「手負いの戦艦を沈められんとは航空隊は何をしているんだッ!!」
ハルゼーは喚き散らす。
「リーの戦艦部隊でジャップを追い払えッ!!」
ハルゼーは念のためにと、ガタルカナル東方海上に新鋭戦艦二隻を出撃させていた。
司令官はウィルス・A・リー少将であり、部隊は戦艦ワシントンとサウス・ダコタに、駆逐艦四隻だった。
―――戦艦ワシントン―――
「フ。ブルは我々に戦いの場を与えてくれたようだ」
ワシントンの艦橋でリー少将がニヤリと笑う。
「全艦は直ちにガタルカナルへ向かう」
六隻の艦隊はガタルカナルへと向かった。
―――旗艦長門―――
「長門型と金剛型を分離するのですか?」
第八艦隊参謀長の大西新蔵少将が南雲に言う。
「うむ。比叡は十八ノットしか出ないみたいだから比叡と霧島はガ島砲撃をさせる。それに元々の目的はガ島砲撃だ」
「確かに……分かりました。早速手配します」
そして比叡と霧島には駆逐艦電と照月の二隻が護衛して司令官は引き続き阿部中将になった。
―――21:00―――
南雲中将はサボ島の南水道からの突入を決意して艦隊を南水道に向けていた。
そして21:00過ぎ、米軍の駆逐艦が艦隊を発見した。
しかしこの艦隊は南雲艦隊の前方約八キロに警戒部隊としていた高間完少将率いる第四水雷戦隊の駆逐艦朝雲、時雨、白露、夕暮の四隻だった。
一方、第四水雷戦隊も米軍の駆逐艦を視認していた。
「砲撃開始ッ!!」
高間は即座に沈める事にした。
ズドオォォーンッ!!
駆逐艦が搭載する十二.七センチ砲が火を噴き、米駆逐艦の至近に着弾する。
ズドオォォーンッ!!
対して米駆逐艦は星弾を撃ち上げた。
「ちッ!!知らされたかッ!!」
高間は悔しそうに言う。
―――旗艦長門―――
「南雲長官、照明弾ですッ!!」
「比叡と霧島はガ島を砲撃せよ。残りは全て四水戦の応援へ向かえッ!!」
直ちにガ島砲撃部隊と分離して南雲艦隊は第四水雷戦隊の方向へ行く。
―――戦艦ワシントン―――
「敵駆逐艦の後方から戦艦二隻を含む艦隊が接近中ッ!!」
「敵戦艦はコンゴウ級だな。コンゴウ級の主砲は十四インチ砲。対して我々のワシントンとサウス・ダコタの主砲は十六インチ砲。充分に勝機があるな」
リー少将がニヤリと笑う。
「同航戦に展開せよッ!!ジャップの旧式戦艦など、我々の十六インチ砲で沈めてやるッ!!」
米海軍一の砲術屋であるリーはそう宣言した。
しかし新たに撃ち上げた星弾で南雲艦隊を見た見張り員が慌てて報告してきた。
「敵戦艦はコンゴウ級ではありませんッ!!ナガト級ですッ!!」
『ッ!?』
リー少将達の顔は凍りついた。
―――戦艦比叡―――
「今頃、米軍共は驚いてるだろうな」
「あらどうして?」
見張り員である加藤清孝上等水兵が呟いた言葉を、左目が包帯に巻かれた比叡が尋ねる。
「比叡と霧島だと思った戦艦が実は長門と陸奥だった……なんて、四十一センチ砲の戦艦を目の前にしたら米軍は逃げるだろうな」
「あら?じゃあ私達では逃げないとでも?」
「い、いや別にそう言うつもりで言ったわけじゃ……」
「おい加藤。比叡と話すのはいいがしっかり見張れよ」
「す、すみません」
加藤は見張り員を仕切る特務少尉に怒られた。
この時、ガ島砲撃部隊である比叡と霧島は既に砲撃位置にいた。
既に主砲には三式弾が装填されて、ガ島に砲身を向けていた。
「砲撃を開始するぞッ!!」
特務少尉が叫んだ瞬間、比叡と霧島が搭載する三十五.六センチ砲が火を噴いた。
目標はガ島にある米航空基地のヘンダーソン飛行場だった。
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