第三話 防空
とうとう金総書記が亡くなった……。拉致解決や北朝鮮の核廃絶は出来やすくなるんかな……。
比叡が戦場を離れた後、第四水雷戦隊司令官の高間完少将は状況の整理のために一旦、全艦の集結を命じた。
米軍は指揮官キャラガンが戦死、更には次席指揮官のスコット少将も夕立からの砲雷撃を受けて乗艦のアトランタと共に戦死した。
アトランタに止めを刺したのは三本の酸素魚雷だった。
しかし、夕立も無傷では済まず、被弾炎上して遂に負傷した吉川から退艦命令が出された。
損傷した夕立は撃沈処分として、夕立へ魚雷を発射した僚艦の春雨から最期を見送られながらソロモンの海に沈んだ。
対する米軍は巡洋艦サンフランシスコ、アトランタ、駆逐艦二隻が撃沈した。
客観的に日本軍は戦艦比叡が大破、駆逐艦夕立、暁が沈没なので米軍が不利である。
高間少将は米軍を大分叩いたと判断をして、全艦の戦場離脱を命じた。
先に戦場を離脱した比叡を守るために……。
「比叡姉様。傷の具合は如何ですか?」
比叡の防空指揮所に、比叡の妹である霧島が転移をしてきた。
霧島は眼鏡をかけ、腰近くまである長髪の風貌である。
対して比叡は、左目に包帯が巻かれて、左目の辺りからの部分から血が滲んでいた。
「……大分良くなったわ。排水も上手くいっているみたい」
「敵機来襲ゥッ!!」
その時、比叡の見張り員が叫んだ。
『ウウゥゥゥーーーッ!!』
全艦に空襲警報のサイレンが鳴り響く。
「対空戦闘用意ッ!!」
「対空戦闘用意ッ!!」
乗組員が慌ただしく動き出す。
「……後少しで南雲中将と合流が出来るのに……」
阿部は悔しげに言う。
「機種はSBDドーントレス。数は十六機ッ!!」
見張り員が逐一報告をしてくる。
「主砲砲撃開始ッ!!」
ズドオォォォーーンッ!!
対空用砲弾である三式弾を装填した三十五.六センチ砲が火を噴く。
ドーントレス隊はそれを回避して損傷した比叡に向かってくる。
「……やむを得ないか。速度を上げ「新たな航空機ッ!!」何ッ!!」
阿部が上空を見た時、先頭機のドーントレスが火を噴いて墜落をしていた。
「二式水戦ですッ!!数は六機ですッ!!」
「レカタの水上基地から来たのか……」
ソロモン諸島のイサベル島のレカタには海軍の水上基地があり、二式水戦や零式水偵などが多数あった。
レカタの基地司令官は南雲艦隊からの零戦が来るまでとして独断で二式水戦六機と対潜哨戒機として零式水偵を派遣したのだ。
その直後には南雲艦隊からの零戦十二機も到着した。
阿部艦隊を襲おうとしたドーントレス十六機は全て落とされた。
以後、何回かの空襲があったが、南雲艦隊から飛来した零戦が全て追い払ってくれた。
そして17:00に阿部艦隊は近藤、南雲艦隊と合流をした。
「南雲長官。近藤中将旗艦愛宕より発光信号です」
「何?」
いきなりの愛宕からの発光信号で南雲は首を傾げた。
「近藤さんは何と言っているんだ?」
「は。……艦隊の指揮権を南雲長官に譲ると言っています」
「何ぃ?」
更に詳しい事が報告された。
『南雲君。私は確かに第二艦隊長官だが、夜戦の指揮をした事はあまりない。だが、君はミッドウェー、第一次ソロモンで夜戦と海戦を指揮している。敵を確実に倒すなら君が一番適任だと私は思い、指揮権の委譲をしたのだ』
簡単に説明すればこうである。
「近藤さん……そこまで俺を買っているのか……」
南雲は軍帽を深く被る。
その時、何かキラリと光る物があった。
「……よし、愛宕に伝えてくれ。指揮官の任務は引き受けよう」
南雲は指揮官の任務を引き受けた。
こうして、全体的の指揮官は第二艦隊司令長官の近藤信竹中将だが、ガ島突入時の指揮官は南雲忠一中将が取る事になった。
連合艦隊司令部には後日報告になり、一悶着が起きるのは些細な事だった。
「よし、ガ島に突入するッ!!」
空母瑞鳳、龍鳳は駆逐艦四隻と共に後方へ退避して残りはガダルカナル島に向かったのである。
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