第一話 餓島
要望によりミッドウェイ海戦ifからの続きで第三次ソロモン海戦です。
将斗「史実の第三次ソロモン海戦なのに勘違いしたくせに……」
それを言うな(T_T)
―――1942年11月10日、ブーゲンビル島沖合―――
そこには約二十隻程の艦艇が航行していた。
「……ガ島攻防は既に三ヶ月か……」
艦隊の中心にいる戦艦長門の艦橋で第八艦隊司令長官の南雲忠一中将が呟く。
1942年8月7日に米軍がガダルカナル島に上陸した。
重巡鳥海を旗艦とした南雲中将の第八艦隊は、即座に出撃。
夜半、ガ島泊地を強襲した。
第八艦隊の被害は鳥海が小破しただけ。
米軍は重巡五隻(史実+重巡シカゴ)、駆逐艦二隻、輸送船九隻を撃沈した。
さらに、南雲中将は輸送船が海岸に降ろした積み荷である食糧や武器弾薬、医療具に向けて艦砲射撃を展開して積み荷の大半を燃やした。
そのおかげで米軍は得意の物量戦術がとれないでいた。(それでも武器弾薬は日本軍が思っていたより多めだが)
しかし、陸軍はガ島の米軍を過小評価をして史実通りに一木支隊、川口支隊が壊滅した。
そして陸軍は遂に丸山政男中将を師団長とした第二師団をガダルカナル島に派遣する事を決定した。
10月13日、戦艦金剛、榛名を筆頭にした栗田中将の挺身攻撃隊がガダルカナル島のヘンダーソン飛行場を艦砲射撃をした。
この攻撃でヘンダーソン飛行場は数日間は機能せず、第二師団と陸戦隊が上陸した。
10月26日、ガダルカナル島近海で空母対決が行われた。
小沢治三郎中将の第三艦隊は空母翔鶴、瑞鶴、飛龍、修理改装した蒼鶴、神鶴、瑞鳳の六隻を率いた。
対するキンケード中将の空母はサラトガにワスプ、護衛空母二隻だけである。
日本軍の攻撃は四波にもおよび、キンケード機動部隊の空母は全滅した。
第三艦隊の被害は航空機約六十機喪失と翔鶴が中破した。
小沢中将は搭乗員育成と内地の燃料枯渇のために大型空母による輸送船団の護衛を山本五十六に具申した。
山本も承諾して、空母翔鶴、瑞鶴、神鶴、雷鶴が輸送船団を護衛して内地と、南方を行き交うようになった。
山本は残った飛龍、蒼鶴、龍驤、飛鷹、準鷹、瑞鳳、龍鳳の七隻をトラック諸島で米軍に睨みを効かせる事にした。
だが、海では勝ったが陸は負けてしまった。
丸山中将の第二師団の将兵は雄叫びを上げながら銃剣突撃をしたが、米軍の集中砲火により壊滅した。
海軍があれ程叩いたにも関わらず、米軍は多くの物量を保持していた。
米軍は潜水艦をも使って輸送作戦に従事していたのだ。
この事に山本長官は再び戦艦による艦砲射撃と輸送船団の壊滅を思案した。
そして選ばれたのが戦艦比叡と霧島であった。
『第八艦隊は第二次挺身攻撃隊を全力で援護せよ』
それが南雲に下された命令だった。
しかし、南雲は命令を受理するどころか、トラックにいた大和に乗り込んできた。
「長門と陸奥を貸して下さい」
山本と面会の時に、南雲が第一声を放った言葉である。
南雲曰く「前回の砲撃は三十五.六センチ砲だったためにあまり米軍の陣地を破壊出来なかったはずだ。なら四十一センチ砲の長門型なら破壊力は充分だ」である。
宇垣参謀長などは長門型を出すのに反対したが、山本長官が賛成したために押し切られた。
第八艦隊は長門型二隻と艦隊護衛のために空母瑞鳳と龍鳳(二隻とも搭載機零戦二一機、九七式艦攻九機)が加えられ、西村祥治少将の第七艦隊を第八艦隊に編成させた。
近藤信竹中将の第二艦隊はそのままである。
「……もうすぐで戦いか……」
長門の防空指揮所で艦魂である長門が前方の海を見ながら呟く。
「フフフ、米軍に四十一センチ砲の威力を思い知らせてやる……」
長門はニヤリと笑った。
―――11月12日、ガダルカナル島沖―――
戦艦比叡と霧島がガ島沖にいた。
「三式弾装填完了しました」
「うむ」
部下からの報告に阿部中将が頷く。
「ガ島の灯火を発見ッ!!タサファロンガ岬の観測班ですッ!!」
見張り員が叫ぶ。
「よし、射撃コースへ変針せよ」
「了解。射撃コースに変針します」
航海長が復唱して射撃コースに変針した。
霧島も旗艦の航跡に続いた。
比叡の主砲がガ島に照準する。
「射撃準備よしッ!!」
砲術長の報告に阿部は頷き、躊躇なく砲撃を命じようとした時だった。
通信参謀が叫んだ。
「て、敵艦隊ですッ!!四水戦の駆逐艦夕立が『敵艦見ゆ』と報じていますッ!!」
一瞬にして比叡の艦橋内が凍りついた。
しかし、首席参謀の本多中佐がいち早く我に返り、阿部に進言した。
「まずは敵艦隊を撃滅すべきですッ!!」
阿部は頷こうとした時、ある言葉が浮かんできた。
『三式弾装填完了しました』
主砲に三式弾が装填されていたのだ。
今、敵艦隊に主砲弾を撃っても三式弾では艦艇の装甲を撃ち破るのは難しい。
阿部は決断した。
「我々本隊はまず飛行場を砲撃する。高間少将の四水戦は突撃を堪えて反転。敵艦隊を我々の方へ誘導するように伝えよッ!!」
此処に史実とは違う第三次ソロモン海戦が始まろうとしていた。
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