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第二話 防空戦




―――空母エンタープライズ―――


「スプルーアンス司令、やりましたッ!!敵空母三隻が炎上しているとの報告ですッ!!」


その瞬間、エンタープライズの艦橋は歓声に包まれた。


艦魂のエンタープライズも安堵の息を出した。


「やりましたか…」


「司令官。我々の勝ちですッ!!」


参謀長のマイルズ・ブローニング大佐がスプルーアンスに言う。


「うむ。だが、まだ一隻ヒリュウが残っている。油断は出来んぞ」


スプルーアンスは緊張が弱まりつつあった艦橋に喝を入れる。


「その通りですね」


参謀達も頷く。


「戻ってきた機体に燃料補給及びに爆装、雷装をするのだ」


スプルーアンスの命令は各部所に伝わった。


1000時までに帰投していた攻撃隊を発艦させた。


飛龍にとどめを刺すために……。


F4Fが二十機、SBDが三十機、TBDが八機の攻撃隊は飛龍を目指す。




―――空母飛龍―――


「飛龍」


士官服を着た女性が大尉の階級を示す搭乗員に呼び止められた。


「何だ?」


「顔、大丈夫か?」


搭乗員に指摘された飛龍はうぐっと顔を濁らす。


よく見ると頬っぺたに水が渇いた後がある。


飛龍は先程まで泣いていたのだ。


「……蒼龍義姉…もう長くないかもしれない。加賀さんも赤城さんも……」


飛龍はまたグニャリと顔を歪ませる。


「東雲……俺…俺…」


「……………」


東雲と呼ばれた搭乗員は飛龍を抱きしめた。


「……赤城さん達の仇は必ず取る。やからお前は安心しとけや」


飛龍は頷く。


「東雲大尉。山口司令がお呼びです」


伝令が来た。


「行くわ」


東雲はぷらぷらと飛龍に手を振った。




「東雲、入ります」


三沢が艦橋に入ると山口が出迎えてくれた。


「おぉ、東雲大尉。実は防空戦なんだが……雷撃機は迎撃はしないでほしいのだ」


「どういう事でしょうか?」


「うむ、米軍の雷撃機は艦艇の対空砲でも充分通用する。が、艦爆機は急降下してくるのでどうしても照準がしづらいのだ。そこで、零戦と九九式艦爆は敵の艦爆隊を迎撃してほしいのだ。雷撃機はこちらで対処する」


「成る程。分かりました。敵機は生かして帰しませんよ」


三沢の言葉に山口は頷く。


東雲蒼士しののめそうしは日中戦争からのベテランである。


敵機撃墜は五十機以上である。



閑話及第。



―――1200時―――


飛龍から約二百キロの地点を飛行していた友永機が何かを見つけた。


「…何だ?」


友永が双眼鏡で見ると、飛行していたのは米攻撃隊だった。


「飛龍に報告だッ!!急げッ!!」


後部座席の機銃手が慌ててキーを叩いた。




―――空母飛龍―――


「友永機より入電ッ!!『敵機編隊接近中。戦闘機約二十機、艦爆約三十機、雷撃機約十機ナリ』以上ですッ!!」


山口は即座に動いた。


「零戦、九九式艦爆全機発艦せよッ!!全艦対空戦闘用意ッ!!」


飛龍は増速をし、零戦と九九式艦爆のプロペラが回り出す。


「蒼士ッ!!頼むぞッ!!」


飛龍が発艦しようとする三沢の零戦に『帽振れ』をする。


東雲も軽く手を振り、発艦した。




飛龍から発艦したのは零戦二十六機(補用機と赤城の零戦一機も含む)、九九式艦爆二十二機の四十八機と蒼龍に搭載されていた二式艦偵一機の四十九機が大空に舞い上がった。


(飛龍の補用機は十六機なので四機ずつ戦闘機、艦爆機、艦攻機にしています)



「全機につぐ。艦爆機を狙えッ!!」


東雲はあまり役に立たない航空無線に呼び掛ける。


一応出撃する前に説明しといたがうまくいけるかどうかである。


「太陽を背にして奇襲をかける」


東雲は部下に無線で伝えると上昇をする。


列機も続いている。


東雲迎撃隊は高度四千、米攻撃隊は高度三千にいた。


「全機突撃やッ!!」


東雲は急降下で突入する。


列機も続く。


敵機編隊はあっという間に迫ってきた。


「落ちろッ!!」


タタタタタタタッ!!


ドドドドドドドッ!!


機首から七.七ミリ、主翼から二十ミリ機銃弾が放たれて、ドーントレスに突き刺さる。


グワアァァーーンッ!!


ドーントレスが爆発する。


東雲の奇襲に気付いたワイルドキャットは東雲機を銃撃しようとしたが、後から来た列機に落とされた。


初撃でワイルドキャット八機、ドーントレス十三機、デバステーター三機が落とされた。


デバステーターを落としたのは九九式艦爆である。



「戦闘機は追うなッ!!敵の艦爆隊を攻撃やッ!!」


東雲はノイズが走る航空無線に部下に指示を与える。


残り十七機になっているドーントレスに零戦、九九式艦爆が殺到する。


そこへ、生き残ったワイルドキャットが割り込んでくる。


両者乱れるドッグファイトが開始された。


飛龍を中心とした機動部隊に乱戦から逃れてきた五機のデバステーターが突入してくる。


しかし、機動部隊の砲門は全てデバステーターに向けらていた。


「撃ち方始めッ!!」


ズドオォォォーーンッ!!


ドンドンドンドンッ!!


ドドドドドドドッ!!


グワアァァーーンッ!!


グワアァァーーンッ!!


五機のデバステーターはたちまちに火だるまになり海面に突っ込んだ。


ワイルドキャットやドーントレスも零戦や九九式艦爆に阻まれて機動部隊に届かない。


「第一波は守れたな……」


操縦席で東雲が呟く。


既に機体は飛龍に着艦しようとしている。


ズウゥンッ!!


東雲は綺麗な三点着艦をする。


東雲は機体を整備員達に任すと艦橋に入った。


「おぉ、東雲大尉。ご苦労だった」


「ありがとうございます。ですが、あともう一回は来ると思います」


「うむ。九七式艦攻隊もそろそろ帰ってくる。九七式艦攻の代わりは零式水偵がやっている」


「山口司令。無線機は何とかなりませんか?ノイズばっかでもう嫌ですよ」


「うむ。内地に帰ったら山本長官に掛け合ってみる」


そこへ通信兵が艦橋に入ってきた。


「零式水偵より入電ッ!!敵攻撃隊約五十機が接近中とのことですッ!!」


「東雲。すまんがすぐに飛び上がってくれ」


「お任せ下さい」


東雲は再び機上の人となった。




―――午後四時半頃―――


「二式艦偵からの報告はどうだ?」


山口が伊藤に聞く。


先程の空襲も難無くとかわした山口は二式艦偵を撤退していく敵攻撃隊の後を付けさせていたのだ。


「二式艦偵からの報告では、敵空母は三、巡洋艦八、駆逐艦十五隻の艦隊とのことです」


「ふむ、南雲さんがどう殴り込みをするかだな。長良に行って聞いてみるか」


山口は伊藤と二人で長良に乗り込む。




―――長良艦橋―――


「おぉ、山口。防空戦はご苦労だった」


南雲は山口が見えると頭を下げる。


これには山口も驚いた。


「い、いえ、私ではなく搭乗員達のおかげです」


「ハハハ。それもそうだ。ところで山口。お前が来たというのは俺がどう殴り込みかだろ?」


「はい、その通りです」


「二水戦らと合流して補給が完了した後、俺達は敵艦隊に向かう」


「はい、敵もまだ飛龍を撃沈できないのが悔しいらしく艦隊をこちらに向かわせています」


「多分、合流は夜中で補給が完了するのは夜明け前だと思う。夜明けと同時に敵艦隊攻撃をしてくれ。それと護衛の駆逐艦四隻を残して俺は敵艦隊に殴り込みをかける」


「分かりました。それと長官。敵空母は出来るだけ捕獲してくれませんか?我が方も赤城、加賀、蒼龍を失いました」


「うむ、それについては俺も賛成だ。出来るだけ一隻でも捕獲できるよう努力はしてみる」


「分かりました」


南雲との会議が終わり、山口は飛龍に帰った。




―――夜中午前一時頃―――


「南雲長官、見えました。神通ですッ!!」


味方艦と確認できるように白色吹流を両舷につけさせていた。


「油槽船に横付けだ。補給は素早くするんだッ!!」


そして、第一機動部隊は一時の休息に入った。


御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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