第七話 艦隊決戦四
「……行くのよ」
バシュンバシュンッ!!
駆逐艦綾波の艦魂である綾波の掛け声と共に、綾波が搭載している六十一センチ三連装魚雷発射管から九〇式魚雷が発射された。
ちなみに吹雪型は酸素魚雷を搭載していないらしい。
三隻から放たれた二七本の魚雷は炎上しているワシントンに向かって疾走した。
―――戦艦ワシントン―――
「敵魚雷接近ッ!!」
「面舵一杯ッ!!かわせェッ!!」
リー少将が叫んだ。
操艦手が慌てて舵を右に回す。
「駄目ですッ!!当たりますッ!!」
「総員衝撃に備えろッ!!」
白い泡を吐き出しながら九〇式魚雷はワシントンの左舷に突き刺さった。
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
ワシントンの左舷から九〇式魚雷が命中した証である水柱が立ち上った。
―――戦艦長門―――
「敵先頭艦に魚雷四本命中ッ!!」
見張り員からの報告に歓喜の歓声が出ようとした時、二番艦のサウス・ダコタからの砲弾が長門を襲った。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
「ぐぅッ!!」
命中の衝撃に南雲が転倒した。
「長官ッ!!」
「俺に構うなッ!!構う暇があれば被害報告をしろッ!!」
「ほ、報告ッ!!」
その時、伝令が来た。
「二番砲搭付近に命中弾ッ!!二番砲搭使用不能ッ!!右舷副砲群壊滅状態ですッ!!」
サウス・ダコタの砲弾は長門の二番砲搭付近で爆発した。
これで二番砲搭は衝撃で故障して使用不能。
もう一発は右舷副砲群に命中して、副砲員を爆風で薙ぎ倒した。
「消火急げッ!!」
応急班が艦内を駆け回る。
「……ぐっ……」
防空指揮所で、長門は負傷しながらも日本刀を支え棒として立ち上がる。
「……これしきの事で私が死ぬと思っているのかァーーーッ!!」
ズドオォォォーーンッ!!
長門の叫びと共に使用可能な一番、三番砲搭から砲弾が発射された。
その四発の砲弾は全弾サウス・ダコタに命中した。
更に、サウス・ダコタには第二水雷戦隊の第十五駆逐隊の駆逐艦早潮、親潮、陽炎の三隻が忍び寄っていた。
一方、綾波達からの雷撃を受けた戦艦ワシントンは機関を停止していた。
初撃で左舷に四本、更に次発装填してからの雷撃に三発を食らっていた。
「司令官。退艦をお願いします」
「………仕方ない……」
リー少将は参謀達の説得に渋々と頷いて退艦をした。
そして戦艦ワシントンは23:41にサボ島沖に沈んだ。
そしてワシントンの後を追う感じでサウス・ダコタも雷撃を受けそうになっていた。
―――駆逐艦陽炎―――
「あたし達の訓練の成果を食らいなさいッ!!」
バシュンバシュンッ!!
三隻から二四本の九三式魚雷はサウス・ダコタに向かっていった。
「いや……来ないで……来ないでェェェーーーッ!!!」
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
サウス・ダコタの防空指揮所で艦魂のサウス・ダコタは三隻から酸素魚雷が発射された様子を見てしまい、恐怖心からか左舷の両用砲が三隻に砲弾を叩き込んだ。
結果的に早潮の魚雷発射管に命中してその誘爆で早潮は爆沈してしまうが、それと引き換えにサウス・ダコタの左舷に水柱が五本立ち上ったのである。
酸素魚雷の破壊力は凄まじく、水柱が無くなる頃にはサウス・ダコタは大傾斜をしていた。
サウス・ダコタは23:58に沈没をした。
―――戦艦長門艦橋―――
「敵艦隊壊滅しましたッ!!」
見張り員の言葉に歓声が上がる。
「成果は?」
「戦艦二、駆逐艦四隻を撃沈したようです」
南雲の問い掛けに参謀が答える。
「……ガ島砲撃部隊からの通信は来ているのか?」
「は。ガ島ヘンダーソン飛行場の砲撃は成功した様子です」
南雲は腕を組んだ。
「……何か気になる事でも?」
「いや……ついでだ。第三一駆逐隊と第二七駆逐隊は日米の乗組員の救助をせよ。残りは隊列を整えてガ島ヘンダーソン飛行場を再度艦砲射撃する」
「ッ!?し、しかし宜しいのですか?既に比叡と霧島が砲撃をしています」
「構わん。元々俺は長門と陸奥も投入する気だった。それに四十一センチ砲だと三十五.六センチ砲より威力はある」
慌てる大西参謀長に南雲が言う。
「……分かりました。やりましょう」
大西も諦めて、再度ガ島ヘンダーソン飛行場艦砲射撃が決行する事になったのである。
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