第六話 艦隊決戦三
―――重巡愛宕艦橋―――
ズガアァァァーーンッ!!
『ッ!?』
砲弾が命中した衝撃で艦が揺れる。
「被害を知らせろッ!!」
命中の衝撃で床に倒れた近藤が叫ぶ。
「後部四番砲搭に命中ッ!!四番砲搭にいた者全員戦死ッ!!更に衝撃で後部五番砲搭旋回不能ッ!!」
服が血まみれになった伝令が艦橋に駆け込んできてそう報告する。
「更に水偵用の飛行甲板に命中ッ!!カタパルトが吹っ飛ばされましたッ!!」
「敵艦隊との距離はッ!?」
「約二万一千ですッ!!」
近藤の叫びに見張り員が答える。
「砲戦距離までもう少しだ。もっと近づけろッ!!長門と陸奥を沈めさせてはならんッ!!」
近藤が吠える。
近藤は長門と陸奥の被害を無くすために自艦である愛宕を囮にしたのだ。
その艦魂である愛宕は防空指揮所で全身血まみれの状態だった。
「……はぁ…はぁ…長門さんと陸奥さんを沈めさせないためなら私の命を差し出しますよ。……」
愛宕は日本刀を支え棒にして立ち上がる。
「……さぁ…ドンドンと私を狙うのよッ!!私が戦艦よッ!!」
愛宕が言い終えるとワシントンとサウス・ダコタから放たれた砲弾が愛宕周辺に落下して水柱を上げた。
―――長門防空指揮所―――
「……愛宕ッ!!」
長門は自分の双眼鏡で愛宕を見る。
愛宕の周辺に砲弾が夾叉していた。
後数回で愛宕に命中するのも必然になってきた。
ズドオォォォーーンッ!!
長門と陸奥の四十一センチ砲が火を噴いた。
愛宕が必死に探照灯を付けているために狙いは定めやすかった。
ズシャアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
ワシントンに十六発の砲弾が降りかかった。
遂にワシントンに三発が命中した。
「敵先頭艦に命中弾ッ!!」
「よし、ドンドン撃てッ!!」
南雲は士気を鼓舞する。
その時、敵艦隊から強烈な光が発せられた。
零式水上観測機(通称零観)が照明弾を投下したのである。
「探照灯が無ければ見事な背景照明だッ!!愛宕に打電だッ!!探照灯を消すんだッ!!」
南雲が叫ぶ。
南雲の指示は急いで愛宕に伝わり、近藤も漸く探照灯を消した。
しかし、愛宕は炎上しており、その火災を目印にワシントンとサウス・ダコタは砲撃を続けた。
―――重巡愛宕艦橋―――
「ハッハッハ。こりゃぁスリルがあるな」
愛宕の周辺に立ち上る水柱を見て近藤が笑う。
「ちょ、長官………」
参謀が唖然とする。
「なぁに、愛宕が粘ればその分、長門と陸奥は砲撃をしやすくなる。艦長、之字運動の正確さを敵に見せてやれッ!!」
「了解ですッ!!取舵二十ッ!!」
近藤の言葉に愛宕艦長の伊集院松治大佐が頷く。
愛宕は未だに健在であった。
―――戦艦ワシントン艦橋―――
「消火急げッ!!」
リー少将は火災が発生している左舷両用砲群を見ながら叫んだ。
命中した三発のうち、二発は左舷両用砲群に命中して直撃した両砲員達を消滅させていた。
残り一発はカタパルトを吹き飛ばした。
「敵の観測機を撃ち落とせッ!!」
生き残っていた両用砲が上空に砲弾を打ち上げるが、何処にいるのか全く分かってなかった。
そして、再び長門と陸奥から砲弾がワシントンに落下して殆どが命中した。
―――長門艦橋―――
「砲撃目標を敵先頭艦から敵二番艦に変更せよ。第七艦隊の西村に打電。全艦突撃せよッ!!しぶとい奴には魚雷が一番だからな」
南雲はそう言う。
更に、軽巡長良、白雪、敷波、綾波、朝雲も突撃を開始する。
敵艦隊との距離は一万二千になっていた。
ズガアァァァーーンッ!!
「陸奥被弾ッ!!」
サウス・ダコタからの砲撃が陸奥に命中した。
砲弾は陸奥の後部三番砲搭に直撃したが、跳ね返され、その直後に爆発した。
幸いにも三番砲搭から死者は出なかったが、衝撃の影響で三番砲搭は旋回不能になった。
先頭艦のワシントンも撃っているが、散発的であった。
ワシントンの前部一番砲搭付近の甲板に砲弾が命中して一番砲搭は砲撃不能し、二番砲搭も衝撃の影響で故障していた。
唯一、三番砲搭が果敢に砲撃をするが、駆逐艦朝雲、白雪、綾波が距離七千から必殺の酸素魚雷を発射した。
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