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童貞を見破る方法は存在しない

 俺は続けた。


「頭の悪い人間は、『あいつは皆が下ネタで盛り上がっているときに静かに下を向いていたから童貞だ』とか、『こいつは女と話すときに自信なさげにおどおどしているから童貞だ』とか、そういう主観的な固定観念で他人を童貞と決めつけたがるが、実際にはそんな判断基準は何の証明にもならない。くだらない思い込みだ。このゲームの童貞もそうだ。ゲーム制作側が用意した童貞は『自己申告の童貞』でしかない。だから、実際には非童貞の男が演じているゲームの中の童貞役に対して、俺は今必死に尋問しているのかもしれない。そういう言い知れない不安感を、俺は中断中に感じたんだ。でもそれは、運営の一番痛いところだから、指摘するのは得策ではなかった。『運営スタッフは童貞役が本当に童貞であると、一体どうやって調べたんですか?』そういう言葉で論破するのは、今はやめておこう。ここは大人の対応をして、もしゲームに負けたときに、このゲームの無効を宣言する材料として保持しておこう。そう思った。だから俺は、あのとき言いかけてやめたんだ」


《成る程。確かに痛いところをつくな》


「で、さらにそのとき考えたんだ。非童貞の対象者も、一体どうやって調べて集めたんだろうって。非童貞も自分が非童貞と証明する方法はない。父親だろうがホストだろうが、童貞である可能性があるからだ。父親は体外受精、ホストは童貞を売りにしているカワイイ系。いくらでも考えられる。だから、非童貞も童貞と同じで自己申告に違いない。そう思いかけて、俺は自分の考えを打ち消した。非童貞を第三者に証明する手段は、一つだけある。それは、第三者が見ている前でセックスをすることだ。そこに思い至ったとき、控室でセックスが行われていることを疑い始めた。だからこそ、後半に福助が言った、対象者は中断中控室で『休憩していただけ』という一言に悩まされたんだ」 


《くっくっく。私にとってはファインプレーのセリフだったがな》

 福助はまた笑った。

《では時間も時間なので、このあたりでお開きにしよう》


 その合図とともに、右の扉が開いた。


 黒服にサングラスの男が入ってきて、俺に封筒を手渡した。

 やったぞ!

 副賞の百万円だ!


 と、思ったら、妙に薄い。そういえば非童貞を一人教えてもらうのに八十万支払ったのを忘れていた。

 

 俺は、異常に軽い二十万円の札束が入った封筒を、ぎゅっと握りしめた。


次回最終回です

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